FBSは「点数を見る評価」ではない
FBS(Berg Balance Scale)は、多くの現場で実施されているバランス評価です。
一方で、
・合計点だけを見て終わっている
・再評価時の点数変化しか追えていない
・減点理由を深く考えられていない
と感じたことはないでしょうか。
FBSの本質は、
「どの項目で、なぜ減点されたのか」
を読み取ることにあります。
この記事では、各項目の減点理由から
何を疑い、次に何を評価・介入すべきか
を考えるための視点を整理します。
結論|FBSは「できない理由」を読む評価
FBSの減点は、単純なバランス能力低下を意味するとは限りません。
同じ減点でも背景には、
・筋力
・可動域
・感覚
・予測的姿勢制御
・恐怖心や注意配分
など、さまざまな要因が隠れています。
点数を結果として見るのではなく、
減点を手がかりに臨床仮説を立てる評価
として使うことが重要です。
FBSを読む前に押さえておきたい前提
・同じ点数でも中身は全く違う
・代償動作は「能力」ではなく「戦略」
・失敗よりも「成功の仕方」を観察する
この前提を持つだけで、FBSの見え方は大きく変わります。
各項目の減点理由と臨床解釈
① 椅子から立ち上がる
よくある減点は、
・上肢支持を使用する
・一度で立ち上がれない
といった場面です。
ここで疑いたいのは、
単純な下肢筋力低下だけではありません。
・重心前方移動は十分か
・足部の設置位置は適切か
・恐怖心による動作抑制はないか
立ち上がりは、
筋力+予測的姿勢制御+戦略選択
が同時に求められる動作です。
② 立位保持(支持なし)
時間は保てるが、
身体の揺れが大きいケースがあります。
この場合、
・支持基底面内での制御か
・視線固定に頼っていないか
・足関節戦略だけで対応していないか
といった点を観察します。
静止できているかどうかより、
どの戦略で立っているか
が重要なポイントです。
③ 座位保持
一見簡単に見える項目ですが、
体幹機能や感覚入力の状態を反映します。
・骨盤が後傾していないか
・支持基底面が安定しているか
・上肢支持に頼っていないか
座位が不安定な場合、
立位・歩行でのバランス低下を疑う必要があります。
④ 立位から座位
ゆっくり座れていれば良い、とは限りません。
・制動ができているか
・最後にドスンとならないか
・恐怖心で過剰に慎重になっていないか
ここでは、
遠心性収縮による制御能力
と
転倒回避の戦略
を見る視点が重要です。
⑤ 移乗
減点時は、
支持物の使い方に注目します。
・支持物がないと不安定か
・動作順序は整理されているか
バランス能力だけでなく、
判断・経験・生活習慣
が反映される項目です。
⑥ 立位で目を閉じる
この項目は、
視覚依存の有無を評価する視点が中心です。
減点がある場合、
・体性感覚入力は十分か
・前庭情報の利用はできているか
感覚の「低下」ではなく、
感覚の使い方の偏り
として解釈することが重要です。
⑦ 足を揃えて立つ
支持基底面が狭くなることで、
制御戦略の質が問われます。
・股関節戦略が使えているか
・体幹の側方制御は可能か
片麻痺例では、
非対称性の影響も考慮する必要があります。
⑧ 上肢前方伸展
ここでは到達距離より、
重心移動の仕方を観察します。
・体幹前傾だけで代償していないか
・足部で制御できているか
転倒方向の仮説を立てる
重要なヒントになります。
⑨ 床の物を拾う
減点時は、
可動域制限か戦略の問題かを切り分けます。
・股関節や足関節の可動域
・支持脚の安定性
・代償動作の意味
ADL場面との関連が強い項目です。
⑩ 振り向き動作
単なる体幹回旋だけでなく、
注意配分や予測制御も関与します。
・頭部と体幹の協調
・視線の使い方
歩行中の方向転換リスクを
考える材料になります。
⑪ 360度回転
スピードと安定性の両方を見ます。
・歩数は多すぎないか
・途中で止まらないか
歩行能力やTUGとの
関連づけがしやすい項目です。
⑫ 台に足を乗せる
片脚支持能力が問われます。
・支持脚の安定性
・予測的な重心移動
段差昇降や階段動作への
つながりを意識します。
⑬ タンデム立位
静的バランス評価の中でも、
戦略が最も表れやすい項目です。
・代償動作の有無
・恐怖心による制限
点数以上に
「どこでバランスを保てなくなるか」
を見ることが重要です。
⑭ 片脚立位
減点時は、
失敗の仕方を丁寧に観察します。
・支持脚の問題か
・恐怖心か
・戦略不足か
転倒予測に直結する
重要な情報を含みます。
FBSの減点を次の評価・介入につなげる
FBSは、
それ自体がゴールではありません。
減点理由から仮説を立て、
・追加評価
・環境設定
・介入方針
につなげてこそ意味を持ちます。
まとめ|FBSは臨床思考を整理する評価
FBSは、
点数を覚える評価ではありません。
各項目の減点理由を考えることで、
・観察力が高まる
・介入の根拠が明確になる
合計点よりも、
「中身」を読む習慣
を持つことが、臨床の質を高めます。


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