はじめに|「反応を知る」だけでは臨床は動かない
立ち直り反応の評価や訓練を行っても、
「どの動作がどれだけ安定したか」 に結びつかなければ、現場での変化を実感しにくいと感じます。
私自身、
評価 → 訓練 → 動作観察 → 再評価
の循環が曖昧だった時期は、内容が良くても結果が出にくいもどかしさがありました。
この記事では、評価・訓練で得た情報を、
動作改善につなげる視点 を整理します。
① 最初に“どこで崩れやすいか”を決める:入口の設定
立ち直り反応は多くの動作に関与しますが、
入口が曖昧だと改善の優先順位が定まりません。
私は以下の順で入口を決めると、
「何を評価し、どこを変えるべきか」が整理しやすくなりました。
- 1)どの方向で崩れやすいか
└ 前方 / 側方 / 後方 - 2)どのフェーズで破綻しやすいか
└ 起立 / 立位 / 歩行 / 方向転換 / 階段 - 3)何が不足しているか
└ 頸部で環境把握できない / 体幹で戻せない / 下肢で支え直す前に保護伸展反応が出る
例:
方向転換で側方に崩れやすい
→ 側方の体幹反応と足部での支え直しを重点評価
② 「評価結果」をそのまま目標にしない
評価結果は 情報 であって、目標 ではありません。
例:
誤: 側方立ち直り反応が弱い → 側方立ち直り反応を強くする
正: 方向転換の不安を減らす → 側方立ち直り反応を引き出す
「現象 → 評価 → 意味づけ → 動作目標」
の順で考えると、訓練の方向性がブレません。
③ 「反応の階層」を動作観察に当てはめる
動作観察の際、
頸部 → 体幹 → 下肢 → 保護伸展
の順で出ているかどうかを見ると、崩れ方と戻し方の質が判断しやすくなります。
| 見る順 | 動作での表れ方 | 判断のヒント |
|---|---|---|
| 頸部 | 視線が不安定 / 頭部が固まる | 反応の“入り口”が弱い |
| 体幹 | 一気に崩れる / 制御がない | バランス調整の中核 |
| 下肢 | 足が出ない / 支え直しが弱い | 反応を動作に活かせない |
| 保護伸展 | すぐ手が出る | 立ち直り反応より先に働く |
どこで止まっているか を捉えると、訓練の焦点が見えます。
④ 訓練効果を動作に反映させる“3つの橋渡し”
訓練が動作に結びつかない場合、
崩れ方・環境・フィードバック の扱いを見直すと改善しやすいです。
- 崩れ方を小さく入れる
いきなり大きく崩さず、
反応が出る最小限の刺激 で繰り返します。 - 環境設定を変える
床材・高さ・視界・支持物の位置などを調整し、
反応を引き出しやすい条件 に整えます。 - 結果ではなくプロセスをフィードバック
「転ばなかった」よりも、
“どこで戻せたか” を共有するよう意識します。
⑤ 成果判定は「反応の質」+「動作の安定」
私は以下の2点が揃うと、「改善した」と判断しています。
- 反応の質が変わった
・頭部 → 体幹 → 下肢の順で出る
・上肢に頼らず戻せる場面が増えた - 動作が安定した
・歩行中につまずいても立て直せる
・方向転換での崩れが小さくなった
・立ち上がり初期のふらつきが減った
⑥ よくある“つまずき”と整理の視点
| 現象 | よくある背景 | 改善の方向 |
|---|---|---|
| すぐ上肢支持が出る | 体幹反応が使いにくい / 恐怖心が強い | 支え直せる条件を作り、小さな崩れから練習 |
| すぐステップに逃げる | 方向感覚・視線の安定性が不十分 | 頭部・体幹の反応づくりから段階的に介入 |
| 転倒不安が強い | 段階づけ不足 / 成功体験が少ない | 恐怖感の少ない条件での成功体験を積み重ねる |
⑦ まとめ|“評価 → 訓練 → 動作”の循環を回す
- まず「崩れやすい方向」と「フェーズ」を決める
- 評価結果をそのまま目標にせず、動作目標に落とし込む
- 反応の階層を動作観察に当てはめて整理する
- 訓練と動作の橋渡し(崩れ方・環境・フィードバック)を意識する
- 反応の質と動作の安定の両方で成果を判断する
立ち直り反応は、
静的指標だけでは見えない「崩れた瞬間の質」 を捉える評価です。
その視点を動作改善に統合することで、
転倒予測と介入の精度は確実に高まります。


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