退職は、これまで積み上げてきた信頼関係を「どう締めくくるか」が問われる場面です。
とくに理学療法士は患者・家族・多職種との関わりが深く、引き継ぎの質がそのまま評価につながると感じる方は多いのではないでしょうか。
私自身、同僚の退職時に「この引き継ぎは助かる」「この情報が抜けていて困った」と感じた経験があり、
その積み重ねから“信頼を失わない辞め方”には共通点があると考えるようになりました。
この記事では、感謝を残しながら次の環境に踏み出すための手順を、落ち着いて進められる順で整理します。
退職を決意したら最初にやること
担当患者の情報を「自分以外でも理解できる形」に整え始める
退職を伝える前でも始められるのが、
“自分にしか分からない情報” を減らす意識です。
以下のようなポイントは、記録だけでは伝わりにくく、後任が一番助かる情報だと感じます。
- リハビリ内容で本人が不安を感じやすい点
- 歩行・方向転換・立ち上がりなど、ふらつきやすい具体的なタイミング
- 介入で反応が引き出しやすかった誘導方法や促し方
- 本人が前向きな気持ちになりやすい声かけや接し方
- 多職種と連携する際に注意したい情報共有のポイント
こうした部分は、カルテ上では把握しづらい“臨床の温度感”が含まれているため、
後任のセラピストが患者さんとの関係を作り直すうえで大きな助けになります。
もし退職を伝えるなら、どんな順番で?
退職理由をどう伝えるかより、
「現場が混乱せずに回る時期を考慮できているか」が印象に残りやすいと感じます。
- 繁忙期・人事異動前は避ける
- 上司 → 近い同僚 → 担当患者 → 多職種 の順で漏れなく伝える
- 患者への説明は早すぎても不安を煽るため、時期と表現を上司と相談する
退職理由は長く語る必要はありません。
「新しい経験を積みたい」「家族の事情」「通勤距離」など、簡潔で問題ありません。
信頼を失わない引き継ぎ資料の作り方
1枚に全体像を収める
経験上、資料が多いほど引き継ぎは難しくなります。
必要なのは量ではなく、“優先順位の明確さ”です。
書き方は以下の流れが最も伝わりやすい印象です:
- 現状
例:体幹の柔軟性の低下により、重心移動が小さくても制御が崩れやすい - 課題
例:側方シフトで立ち直り反応が出にくく、支持側下肢で支え切れない場面がある - 改善の方針
例:恐怖が出やすい場面を避け、小さな側方シフトから段階づけ - 特に注意したい場面
例:立ち上がり直後/方向転換/疲労が出やすい時間帯
資料は1〜2枚に収め、
細かい部分は口頭で補足するスタイルが好まれやすいと感じます。
後任が助かる “小さなメモ” を残す
- 声をかけると動作が安定しやすいタイミング
- 苦手動作で不安が強まる時間帯
- 動作の切り替え時に崩れやすい癖
- 本人が“納得しやすい”説明の言葉遣い
こうした情報は、文書化しづらいにもかかわらず臨床で最も必要です。
「この人は何を大事にしていたのか」が分かることで、
後任が患者さんとの関係を再構築しやすくなります。
退職前に信頼を守る行動
- 書類や時間管理を最後まで崩さない
- 最終日に一気に挨拶しようとせず、余裕を持って少しずつ行う
- 「退職後も困ったら相談して大丈夫」と言われる印象で終える
引き継ぎ後に連絡が入り、
記憶が新しいうちに答えられる場面は意外と多いです。
そこに誠実に応える姿勢は、
「辞めても関係性が切れない人」としての信頼につながります。
円満退職は次につながる
退職は単なる別れではなく、
次のキャリアの土台になる場面でもあります。
- 無用な対立を生まない
- 情報を残していく
- 周囲が困らない形で去る
この3点を守ることで、
「また一緒に働きたい」と思ってもらえる辞め方ができます。
あなたの臨床が積み上げてきた信頼は、辞め方ひとつで失う必要はありません。
丁寧に終えることで、次のスタートは軽くなります。


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