パーキンソン病の患者さんを初めて担当したとき、どこから評価すれば良いか迷いました。「HY分類は知っているけど、実際の動作とどう結びつけるのか」「歩行やバランスの何を見れば良いのか」と悩んだ記憶があります。
パーキンソン病のリハビリ評価は、病期・症状・ADLへの影響を総合的に判断する必要があります。
この記事では、HY分類の臨床的な見方、歩行・バランス評価のポイント、転倒リスクの判断基準まで解説します。
パーキンソン病リハビリ評価の基本
パーキンソン病の4大症状
パーキンソン病には、特徴的な4つの症状があります。
- 振戦(しんせん):安静時に手足が震える
- 固縮(こしゅく):筋肉が硬くなり、関節が動かしにくい
- 無動(むどう):動作の開始が遅い・動きが小さい
- 姿勢反射障害:バランスを崩しやすい・転倒しやすい
リハビリ評価では、これらの症状が日常生活にどう影響しているかを見ることが重要です。
リハビリ評価で重視すべきポイント
パーキンソン病のリハビリ評価では、以下のポイントを重視します。
- 病期(HY分類)の確認
- 歩行能力(すくみ足・小刻み歩行)
- バランス能力(姿勢反射障害)
- ADL動作への影響
- 転倒リスクの判断
これらを総合的に評価することで、適切なリハビリ目標を設定できます。
Hoehn&Yahr分類(HY分類)と臨床的意味
HY分類の5段階
HY分類は、パーキンソン病の進行度を5段階で評価する分類です。
ステージⅠ:片側のみの症状。日常生活にほぼ支障なし。
ステージⅡ:両側に症状が出るが、バランスは保たれる。軽度の歩行障害。
ステージⅢ:姿勢反射障害が出現。転倒リスクが高まる。日常生活に一部介助が必要。
ステージⅣ:起立・歩行が困難。日常生活に大きな介助が必要。
ステージⅤ:車椅子またはベッド上生活。全介助が必要。
各ステージでのリハビリ目標
- ステージⅠ〜Ⅱ:歩行能力の維持・転倒予防
- ステージⅢ:バランス訓練・ADL動作の安全性向上
- ステージⅣ〜Ⅴ:残存機能の維持・介護負担の軽減
私が担当した患者さんで、ステージⅢの方がいました。自宅では問題なく歩けていたのに、病院の廊下で方向転換したときに転倒してしまいました。姿勢反射障害の影響がこういう場面で出るのだと実感しました。
歩行評価のポイント
すくみ足の評価
すくみ足は、パーキンソン病の特徴的な症状です。歩き始めや方向転換時に足が前に出なくなり、その場で足踏みするような状態になります。
すくみ足が起きやすい場面は以下の通りです。
- 歩行開始時
- 方向転換時
- 狭い場所を通るとき
- ドアの前
私が担当した患者さんは、自宅のトイレのドアの前で毎回すくみ足が起きていました。ドアの前に目印(テープ)を貼ることで、すくみ足が軽減したケースがありました。
小刻み歩行・加速歩行
小刻み歩行は、歩幅が小さくなる症状です。前傾姿勢になり、歩幅が狭く、速度が速くなることがあります(加速歩行・突進様歩行)。
加速歩行(突進様歩行)は、前に倒れそうになるのを防ぐために足を速く動かす状態で、転倒リスクが非常に高くなります。
方向転換時の観察ポイント
方向転換時は、すくみ足や転倒が起きやすいタイミングです。以下を観察します。
- 足が止まってしまわないか
- 体幹と足のタイミングがずれていないか
- バランスを崩していないか
方向転換時に体幹だけが先に回転し、足が遅れてついてくるパターンは転倒リスクが高いサインです。
バランス評価のポイント
姿勢反射障害の評価方法
姿勢反射障害は、バランスを崩したときに立て直せない状態です。評価方法として、プルテスト(引っ張り試験)があります。
プルテスト:患者の背後から肩を引っ張り、バランスを立て直せるかを確認します。3歩以上後ろに下がる、または介助者が支えないと転倒する場合は、姿勢反射障害ありと判定します。
Functional Reach Test
Functional Reach Test(FRT)は、立位でどれだけ前方にリーチできるかを測定するテストです。
- 15cm以下:転倒リスクが高い
- 15〜25cm:転倒リスクあり
- 25cm以上:転倒リスクは低い
パーキンソン病の患者さんは、前傾姿勢のため、FRTの距離が短くなる傾向があります。
TUG(Timed Up and Go)テスト
TUGテストは、椅子から立ち上がり、3m歩いて戻ってくるまでの時間を測定するテストです。
- 13.5秒以上:転倒リスクが高い
パーキンソン病の患者さんでは、方向転換時のすくみ足や加速歩行(突進様歩行)が出現するため、TUGテストで転倒リスクを評価できます。
実体験:転倒リスクの高い患者の特徴
私が担当した患者さんで、TUGテストが18秒かかる方がいました。歩行開始時と方向転換時にすくみ足が出現し、加速歩行(突進様歩行)も見られました。
この患者さんには、歩行開始時に「1、2、3」と声かけをすることで、すくみ足が軽減しました。また、方向転換時は大きく円を描くように歩くよう指導し、転倒リスクを減らすことができました。
転倒リスクの判断
すくみ足と転倒の関係
すくみ足が起きると、その場で足踏みをしている間にバランスを崩し、転倒するリスクが高まります。特に、歩行開始時や方向転換時に注意が必要です。
姿勢反射障害の程度
姿勢反射障害が強い患者さんは、ちょっとしたバランスの崩れでも立て直せず、転倒してしまいます。HY分類ステージⅢ以降では、姿勢反射障害が顕著になります。
ADL場面での転倒リスク評価
ADL場面での転倒リスクを評価することが重要です。以下の場面で特に注意が必要です。
- トイレのドアの前(すくみ足が起きやすい)
- 方向転換時(バランスを崩しやすい)
- 段差(足が上がりにくい)
- 夜間のトイレ(視覚情報が少ない)
リハビリ介入のポイント
HY分類別の介入方法
ステージⅠ〜Ⅱ:有酸素運動・筋力訓練で症状の進行を遅らせる
ステージⅢ:バランス訓練・歩行訓練で転倒予防
ステージⅣ〜Ⅴ:残存機能の維持・関節可動域訓練
すくみ足への対応
すくみ足への対応として、以下の方法が有効です。
- 視覚的な手がかり(床に線を引く・テープを貼る)
- 聴覚的な手がかり(リズムに合わせて歩く)
- カウントしながら歩く(1、2、3と声に出す)
バランス訓練の工夫
バランス訓練では、以下の工夫が有効です。
- 前後左右の重心移動練習
- ステップ訓練(前後左右にステップを踏む)
- 障害物をまたぐ練習
まとめ
パーキンソン病のリハビリ評価では、HY分類で病期を把握し、歩行・バランス能力を評価することが重要です。
すくみ足や姿勢反射障害は転倒リスクに直結するため、ADL場面での具体的な評価が欠かせません。
評価で迷ったときは、「どの場面で転倒リスクが高いか」を考えると、介入のポイントが見えてきます。
臨床でパーキンソン病のリハビリを行う際、この記事が参考になれば幸いです。

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