脳卒中のリハビリでは、歩行再建のために短下肢装具(AFO)が用いられることが多くあります。しかし、装具の導入時期や選定の判断に迷うことはありませんか?
本記事では、短下肢装具導入の考え方から、臨床での判断ポイントまで、理学療法士向けに総論的な視点で解説します。
よくある疑問:このようなとき装具は必要?
- つま先が引っかかって転倒しそうになる
- 膝折れが見られる
- 反張膝が強く歩容に影響する
- 麻痺側に体重をかけられず、歩容が崩れている
- 足部の接地が不安定で荷重しづらい
このような場面では、装具による補助が効果的なことが多くあります。
以下、臨床での判断視点を見ていきましょう。
短下肢装具の役割とは?
- 足部の安定性向上:不安定な接地や内反足などを抑え、立脚期の安定性をサポート
- 足関節のアライメント保持:麻痺による筋活動低下による不適切な動きを抑制
- 膝関節への間接的サポート:足関節固定により膝折れや反張膝を予防
- 歩行時のクリアランス確保:遊脚期のつま先ひっかかり防止
判断のポイント①:足部・足関節の不安定性
内反足や距骨下関節の不安定性が顕著な場合は、短下肢装具の使用が望ましいです。
立脚時の足部接地が不安定で、踵接地や荷重がしにくいケースでは、装具による補正が有効です。
判断のポイント②:膝折れ・反張膝のリスク
膝折れがある場合は、足関節を軽度底屈位に設定し、膝伸展モーメントを補助します。
反張膝がある場合は、足関節を軽度背屈位にすることで膝過伸展を防げます。
このような足関節角度の調整が可能な ダブルグレンザック などの装具を選択肢とします。
判断のポイント③:非麻痺側への過剰な重心偏位
麻痺側に体重をかけられない場合、装具による安定性の確保と「麻痺側に安心して乗る」感覚の補助が重要です。
体幹や骨盤のコントロールと合わせて、麻痺側への荷重誘導を促進する目的で活用します。
判断のポイント④:足部のひっかかり(トゥクリアランス不足)
SHB(シューホーンブレース)、タマラック、ゲイトソリューションなど、軽量かつ柔軟性のある装具も検討します。
特に Br.stageⅣ〜Ⅴ のように回復が進んでおり、筋出力の回復が期待できる症例では、
運動学習の促進を妨げない選定が望ましいです。
必要に応じてゲイトソリューション等の使用も選択肢に含めます。
判断のポイント⑤:踵接地が困難な場合
足関節の背屈制限や足部の不安定性によって、踵接地が不十分なケースでは、矯正要素を持つ装具の使用を検討します。
踵接地を補助することで、歩行周期全体の改善につながります。
装具は「評価→仮合わせ→再評価」が基本
- 装着前後での歩容、重心移動、関節モーメントを確認
- 麻痺の回復ステージに応じて、装具の変更や卒業も視野に
- チームでの情報共有(装具士・医師・OT/ST)を忘れずに
まとめ
短下肢装具の導入は、脳卒中患者の歩行再建における大きな助けになります。
しかし、導入タイミングや目的を見極め、適切な装具を選定するには評価と臨床推論が欠かせません。
まずは「なぜ装具が必要か?」を明確にし、状態に応じて段階的に選択していきましょう。
※SHB、ダブルグレンザック、ゲイトソリューションの選び方や調整ポイントについては、別記事で詳しく解説します。
コメント