はじめに
理学療法士にとって姿勢の観察は、動作分析や治療計画の基盤となる重要な評価です。座位・立位での姿勢は、日常生活動作や運動機能に直結するため、細かい視点でチェックすることが求められます。今回は、座位と立位それぞれの観察ポイントを整理し、臨床で役立つ実践的な視点をまとめます。
姿勢観察で必ずチェックすべきポイント
- 頭部・頸部の位置(前方突出、傾き)
- 肩の高さ・左右差
- 背部・脊柱のアライメント(側弯、後弯、前弯)
- 骨盤の傾き・左右差
- 下肢のアライメント(股関節・膝・足部)
- 重心の位置と支持基底面との関係
座位姿勢の観察ポイント
座位は上肢動作や食事・整容動作などADLに直結するため、特に重要です。
- 骨盤の傾き:骨盤後傾は円背を招き、頸部や肩の緊張につながります。骨盤前傾が過剰になると腰痛の原因になることもあります。
- 体幹・脊柱の安定性:側屈や回旋の偏りは、バランス保持や上肢操作に影響します。
- 頭頸部の位置:前方突出や傾きは嚥下や呼吸機能に影響する可能性があります。
- 上肢への影響:座位姿勢の崩れは、上肢動作の可動範囲や効率に直結します。正しい座位姿勢は、座位時間の延長や動作の効率性向上につながります。
立位姿勢の観察ポイント
立位は歩行や動作移行の基盤であり、全身のアライメントを把握するうえで欠かせません。
- 頭部・体幹の位置:頭部前方位や体幹の側屈は、重心の位置に影響します。
- 肩・骨盤の水平性:左右差がある場合、筋力バランスや荷重の偏りが疑われます。
- 脊柱アライメント:過度な後弯・前弯・側弯は疼痛や疲労の原因になります。
- 骨盤の傾き:立位での骨盤前傾は腰痛や疲労感の原因になります。逆に過度な後傾は下肢や体幹の代償動作を引き起こします。
- 下肢アライメント:膝伸展位での過伸展や外反・内反、足部の回内・回外は荷重バランスに影響します。
まとめ
姿勢観察は、座位・立位の両面から頭部から足部まで全体を俯瞰して評価することが大切です。骨盤や脊柱といった体幹の位置は、上肢や下肢の動作効率に直結します。小さな姿勢の崩れを早期に見抜くことで、介入の方向性を明確にでき、日常生活動作の改善にもつながります。
次回は「座位・立位でのバランス評価」について、さらに詳しく解説します。
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