理学療法士のチームワーク改善法|意見が食い違うときのコミュニケーション術

働き方と悩み

はじめに

理学療法士として働いていると、チーム内で意見が合わない場面は少なくありません。カンファレンスでの方針の違い、他職種との優先順位のずれ、上司との考え方のギャップ…。「正しいことを言っているはずなのに、うまく伝わらない」「反論されると感情的になってしまう」そんな経験をしたことがある方も多いのではないでしょうか。

チーム医療において大切なのは、“意見の正しさ”よりも“伝え方”です。この記事では、理学療法士がチーム内で衝突を防ぎながら建設的に意見を交わすためのコミュニケーション術を紹介します。

理学療法士がチームで意見が合わなくなる理由

理学療法士の仕事は、医師・看護師・作業療法士・言語聴覚士など多職種との連携が欠かせません。それぞれの専門性や役割が異なるため、同じ患者さんを見ていても「大切にする視点」が違うことがあります。

  • 医師は医学的安定を優先し、リスク回避を重視する。
  • 看護師は生活動作の安全性を重視する。
  • 理学療法士は活動量や機能回復を重視する。

どれも正しい考え方ですが、優先順位の違いが衝突を生みやすくするのです。また、経験年数や立場によっても視点は変わります。新人は目の前の動作に集中しがちですが、ベテランは全体像を見て判断します。お互いの考えを理解せずに話し合うと、「分かってもらえない」と感じてしまうのです。

意見の食い違いを防ぐ3つの基本姿勢

① 相手の立場を理解する

「なぜそう考えるのか?」を聞く姿勢を持ちましょう。自分と違う意見が出たとき、反論よりもまず“相手の背景”に注目することが大切です。相手の立場を理解することで、同じ方向を向いた建設的な話し合いができます。

② 否定ではなく、補う言葉を使う

言い方ひとつで、印象は大きく変わります。「それは違うと思います」よりも、「それも大事ですが、こういう視点もあるかもしれませんね」と伝えるだけで、相手の受け取り方がやわらかくなります。“否定”ではなく“補う”コミュニケーションを意識しましょう。

③ 目的を“患者の利益”に戻す

議論が平行線になったときは、「患者さんにとって何がベストか」を共通の目的に戻すことが効果的です。「自分の意見が正しいか」ではなく、「患者さんにどう役立つか」を軸に考えると、自然と方向性が一致します。

チームでうまく意見を伝えるコツ

1. 結論から話す

最初に「自分がどう考えているか」を明確に伝えましょう。そのあとで「なぜそう考えるのか」「具体的な根拠や例」を続けると、論点がぶれません。たとえば、「私は早期離床を進めたいです。その理由は、安静が長引くと筋力低下が進むからです。」といったように、話の流れを整理して伝えることが大切です。

2. 感情ではなくデータで話す

「Aさんはだいぶ良くなっています」ではなく、「Aさんは10m歩行で〇秒短縮しました」と、客観的データを提示します。数字や事実を使うことで、説得力が高まり、議論が感情的になりにくくなります。

3. 相手の発言を一度受け止める

反論する前に、「なるほど」「そういう視点もありますね」と共感を示すと、相手は安心します。受け止めたうえで意見を述べると、建設的な対話が生まれます。

4. 伝え方をやわらかく変換する

  • ×「それは違います」 → ○「もう少しこの視点も考えてみるといいかもしれません」
  • ×「無理です」 → ○「本日は〇時以降なら実行可能です」

衝突が起きたときのリカバリー方法

  • 冷却期間をおく:感情的な対応を避け、時間をおいて再協議する。
  • 第三者を交える:主任やチームリーダーに進行役を依頼して論点を整理する。
  • 自分の伝え方を見直す:「相手を変える」より「自分の伝え方・提案方法」を変える意識を持つ。
  • 学習機会と捉える:対立はチームが成長するためのチャンス。記録し、再発防止の知見に昇華する。

臨床で感じたこと

私も回復期リハビリ病棟で、看護師と意見が合わずに悩んだ時期がありました。「午前中に歩行訓練をしたい」と思っても、「バイタル測定が先」と言われてしまう。お互いが譲れない状況で、正直イライラしたこともあります。

しかし、看護師側の「安全管理を優先したい」という意図を理解したことで、「午前のバイタル後に早めの歩行練習」という折衷案を見つけられました。立場の違いを理解することが、チーム連携の第一歩だと実感しました。

まとめ|意見の違いは悪いことではない

チーム内で意見が合わないのは、視点が違うからこそ起こる自然なことです。重要なのは、“意見の正しさ”ではなく“伝え方と理解し合う姿勢”。相手の立場を尊重し、共通の目的(患者の利益)を忘れなければ、チームはより強くなれます。

衝突を恐れず、コミュニケーションを磨くこと。それが、信頼される理学療法士への近道です。

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