はじめに|FBS(Functional Balance Scale)とは?
バランス評価で迷ったときは、まずFBS(Functional Balance Scale)の活用が有効です。FBSは転倒リスクを客観的に把握でき、リハビリの方針や介助量の判断に直結するからです。例えば、病棟で「歩行を独歩自立とするか」「杖や歩行器を用いた自立とするか」を判断する場面や、「どのADLで転倒しやすいか」を看護師・介護士と共有する際にもFBSは役立ちます。本記事では、FBSの基礎知識から点数の解釈、そして臨床応用までを整理し、明日からの臨床にそのまま活かせる内容を解説します。
FBSの評価方法と項目一覧
FBSは14項目・56点満点の観察型評価で、各項目を0〜4点で採点します。評価にかかる時間は約15〜20分で、高齢者、脳卒中、パーキンソン病など幅広い対象に活用可能です。
FBSの14項目
- 椅子から立ち上がる
- 支持なしで立位保持
- 椅子に座る
- 椅子から立ち上がり数秒立位保持
- 眼を閉じて立位保持
- 足を揃えて立位保持
- 前方リーチ
- 物を拾い上げる
- 後方を振り返る
- 360度回転(方向転換)
- 踏み台昇降(段差踏み換え)
- 片足前方ステップ(つぎ足立位保持)
- 片脚立位
- 階段昇降
点数の解釈とカットオフ値
FBSは合計点で転倒リスクの目安を示します。
- 41点以上:比較的安定して自立歩行可能
- 21〜40点:歩行は可能だが、補助具や見守りが必要な場面が多い
- 20点以下:立位・歩行ともに大きな制限あり、転倒リスクが高い
研究では、Berg Balance Scale(BBS)の合計点が45点未満で転倒リスクが上がる可能性があるとされ、「45点を下回った高齢者は転倒しやすい」という報告もあります(Berg et al., 1996)。私自身も病棟で、独歩自立とするか/杖や歩行器を用いた自立とするかを判断する際の基準として、この45点ラインを参考にしています。
臨床での応用ポイント|評価結果をどう使うか?
FBSは単なる合計点ではなく、どの項目で減点されたかが臨床応用のカギです。減点項目をADL場面に結びつけ、介入・指導・環境調整に直結させます。
- つぎ足立位(項目12)で低得点:人を避ける/狭い通路を歩くなど、つぎ足になる場面でバランスを崩しやすい。
- 後ろを振り返る(項目9)で減点:呼ばれて振り返る、忘れ物に気づいて方向転換する場面で転倒リスクが高い。
- 片脚立位(項目13)で減点:ズボンや靴の着脱、段差昇降など片脚立位を伴うADLでふらつきやすい。
- 段差踏み換え(項目11)で減点:階段や玄関の段差でバランス低下につながるため注意が必要。
さらに、評価結果を看護師や介護士と共有することで、「どのADL動作で介助が必要か」「どの場面で注意が必要か」をチームで把握でき、ケアの質向上にもつながります。
他のバランス評価との比較
FBSは包括的にバランス能力を測れますが、実施にやや時間がかかります。他の評価と組み合わせると、多角的かつ効率的に判断できます。
- TUG(Timed Up and Go Test):移動能力のスクリーニング
- FRT(Functional Reach Test):前方安定性の簡便評価
- Mini-BESTest:姿勢制御の詳細評価
まとめ|FBSの臨床活用のポイント
- FBSはBBSと同じ評価法で、14項目・56点満点でバランス能力を評価できる。
- 45点未満で転倒リスクが上がる可能性が報告されており、臨床判断の一助となる(Berg et al., 1996)。
- 減点された項目をADLに結びつけ、介入・指導・環境設定へ直結させる。
- 看護師・介護士と結果を共有し、現場全体で転倒予防に活かす。
- 他のバランス評価と併用し、より正確にリスクを把握する。
FBSは「評価して終わり」ではなく、評価結果を臨床にどう活かすかが最大のポイントです。
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