はじめに|遊脚期は「振り出しと準備」のフェーズ
遊脚期は歩行周期の約40%を占め、次の一歩を準備する重要な局面です。つま先クリアランスや振り出しの効率性が低下すると転倒リスクに直結します。
私自身も臨床で「つま先の引っかかり」が原因で転倒につながる場面を多く経験しました。そこで、遊脚期を局面ごとに整理して観察することが重要だと実感しています。
この記事では、遊脚期を3つの局面に分けて「どこを見るか」と「よくある異常の原因」をまとめます。
① 遊脚初期(Initial Swing)
- どこを見るか
股関節屈曲の開始、膝屈曲角度、つま先クリアランスを確認する。 - よくある異常の原因
- 大腿四頭筋や腸腰筋の筋力低下で股関節屈曲が不十分になる
- ハムストリングスや足関節背屈制限でつま先クリアランスが不足する
- 代償として骨盤挙上や体幹側屈が出現する
② 遊脚中期(Mid Swing)
- どこを見るか
股関節屈曲角度、骨盤の前方回旋、つま先クリアランスを確認する。 - よくある異常の原因
- 前脛骨筋の筋力低下で下垂足となる
- 中殿筋や体幹安定性の不足で骨盤の過度な動揺が生じる
- 代償として骨盤挙上や体幹の過度な側屈が出現する
③ 遊脚後期(Terminal Swing)
- どこを見るか
膝伸展のタイミング、足関節背屈保持、次の初期接地への準備を確認する。 - よくある異常の原因
- ハムストリングスの柔軟性低下で膝伸展が不十分になる
- 足関節背屈保持ができず、接地時にフットスラップが起こる
- 股関節屈曲制限で一歩が短くなる
臨床応用のポイント
遊脚期は「つまずかずに次の一歩を出せるか」を確認する局面です。
さらに、立脚期への準備段階という側面も重要です。遊脚期でクリアランスが不十分だったり、膝伸展が遅れると、次の立脚期での接地や支持性にも悪影響を及ぼします。
例えば、つま先が引っかかりやすい患者はADLで方向転換や速度変化の場面でも転倒しやすくなります。遊脚期での評価結果をそのまま日常生活の動作指導や環境調整に活かすことができます。
まとめ|遊脚期は転倒リスクと直結し立脚期にも影響する
遊脚期は歩行周期の約40%を占め、振り出しと次の初期接地の準備を担っています。
クリアランス不良や膝伸展不十分は転倒リスクに直結するだけでなく、次の立脚期の安定性にも影響します。
私自身も臨床で遊脚期の観察不足から転倒リスクを見逃した経験があり、局面ごとに整理して見ることの重要性を強く感じています。立脚期と合わせて評価することで、歩行全体の理解と介入がより具体的になります。
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