Borg Scaleを使っているけど、本当に正しく使えていますか?
理学療法士の臨床ではBorg Scaleはよく使われる評価ツールです。しかし「とりあえずBorgいくつですか?と聞いているだけ」という使い方になっていないでしょうか。
私自身も新人のころ、Borg指数を運動後に聞いて記録しているだけで、それを次の負荷設定にどうつなげればいいのか分からない時期がありました。先輩に「数値より患者さんの顔を見ろ」と言われ、そこで初めて「聞くだけでは使えていない」と気づきました。
Borg Scaleは単なる記録項目ではなく、運動負荷を安全に調整するための重要な評価指標です。
この記事では、Borg Scaleの基本的な考え方から、理学療法士が臨床でどのように活用するのか、さらに若手PTが失敗しやすいポイントまで整理します。
結論|Borg Scaleは「自覚症状の把握」と「運動負荷設定」の両方に使うツール
Borg Scaleは、患者さんが今の運動をどのくらいきつく感じているかを数値で評価する指標です。
臨床では主に以下の2つの目的で使われます。
- 今の運動負荷が適切かどうかを確認する
- 次回以降の負荷設定の基準にする
重要なのは、数値だけを見るのではなく、患者さんの表情や呼吸状態などの観察と組み合わせて判断することです。Borg指数を臨床判断に活かして初めて、評価ツールとして機能します。
Borg Scaleとは
自覚的運動強度を数値で表すスケール
Borg Scale(ボルグスケール)は、スウェーデンの生理学者ガンナー・ボルグによって開発された、自覚的運動強度(RPE:Rating of Perceived Exertion)を評価するスケールです。
6から20までの数値で運動のきつさを表します。
このスケールが6〜20になっているのは、安静時心拍数(約60bpm)から最大心拍数(約200bpm)に対応させた設計によるものです。Borg指数に10を掛けると、おおよその心拍数と対応するという考え方があります。
そのため、心拍数モニタリングが難しい場面でも、簡便に運動強度を推定する指標として臨床で広く使われています。
Borg Scaleの数値と感覚の目安
- 6:安静
- 7〜8:非常に楽である
- 9〜10:かなり楽である
- 11〜12:楽である
- 13〜14:ややきつい
- 15〜16:きつい
- 17〜18:かなりきつい
- 19〜20:非常にきつい・最大
リハビリで有酸素運動や歩行訓練を行う場合は、Borg11〜13(「楽である」〜「ややきつい」)を目安にすることが多いです。
特に心疾患や呼吸器疾患など循環動態に配慮が必要な患者では、この範囲を目安に運動強度を調整します。
理学療法士が臨床でBorg Scaleを使う方法
歩行訓練での使い方
歩行訓練でBorg指数を確認するタイミングは、歩行開始後2〜3分が経過した頃と、歩行終了直後の2点が基本です。
開始直後は慣れていないため一時的に数値が上がることがあり、安定したタイミングで確認する方が実態に近い値になります。
例えば以下のような場面で活用できます。
- 歩行距離を延ばすとき
- 歩行速度を上げるとき
- 段差や傾斜を追加するとき
「平地100m歩行でBorg12だったが、段差追加後はBorg14になった」といった変化を記録することで、負荷調整の判断材料になります。
有酸素運動・エルゴメーターでの使い方
エルゴメーターやトレッドミルでは、運動中にBorg指数を確認しながら負荷を調整します。
例えば以下のように運用します。
- Borg13を超えてきた → 負荷を下げる
- Borg11以下が続く → 少し負荷を上げる
また、心疾患や呼吸器疾患の患者では、Borg指数だけでなく以下の指標も同時に確認することが重要です。
- SpO₂
- 心拍数
- 血圧
- 呼吸状態
Borg指数が11でも、バイタルサインに異常がある場合は数値より患者の状態を優先して判断します。
筋力訓練・体幹訓練での使い方
Borg Scaleは歩行や有酸素運動だけでなく、筋力訓練や体幹訓練でも使えます。
例えば以下のような使い方です。
- 「この運動はどのくらいきついですか?」
- 「Borgで言うと何くらいですか?」
前回の運動がBorg13だった場合、次回は回数を調整したり休憩を増やしたりするなど、負荷設定の根拠になります。
Borg Scaleを使うときの注意点
患者さんが遠慮して低く答えることがある
Borg指数を聞くと「大丈夫です」「11くらいです」と答えるのに、顔色が悪かったり呼吸が乱れていたりする場面を経験したことがあるかもしれません。
患者さんの中には「頑張らなければいけない」「迷惑をかけたくない」という気持ちから、実際より低い数値を答えることがあります。
そのため、Borg指数だけで判断するのではなく、患者の様子を観察することが重要です。
スケールの意味を理解してもらう
初めてBorg Scaleを使う患者には、事前説明が必要です。
例えば以下のように説明します。
「6が安静で、20が今まで経験した中で一番きつい運動です。今の運動はどのくらいですか?」
また、スケール表を見える位置に提示すると答えやすくなります。
認知機能低下がある患者では回答精度が下がることもあり、その場合は
- 楽
- 少しきつい
- きつい
などの簡易評価を使うこともあります。
数値だけで判断しない
Borg指数はあくまで患者の主観的な感覚です。
そのため、臨床では以下の観察を必ずセットで行います。
- 表情の変化
- 呼吸数の増加
- 顔色(蒼白・チアノーゼ)
- 返答の変化
- 冷汗・冷感
「Borg指数を聞く」「患者を観察する」という2つをセットにすることが、安全な運動療法の基本です。
若手PTが失敗しやすいポイント
Borg指数を聞くだけで終わっている
「Borgいくつですか → 12でした → 記録」という流れで終わると、評価は情報収集で止まってしまいます。
Borg指数は
- 運動負荷調整
- 運動中止判断
- 次回リハビリの負荷設定
に活かして初めて意味があります。
毎回聞き方が違う
「今日はきついですか?」など曖昧な聞き方では、前回との比較が難しくなります。
「6〜20の数字で今のきつさはどのくらいですか?」と毎回同じ聞き方をすることで、変化を正確に追えます。
数値と患者の様子の不一致に気づかない
「Borg11〜12と言っているのに、会話が途切れるほど呼吸が荒くなっている」というような不一致は見落としやすいポイントです。
数値と身体反応が一致しない場合、そのズレ自体が重要な情報になります。
「言葉では大丈夫と言っているが身体はそうではない」という状態を見抜く観察力を、臨床経験の中で身につけていくことが重要です。
まとめ|Borg Scaleを臨床で正しく使うポイント
- Borg Scaleは6〜20で自覚的運動強度を評価するツール
- リハビリの運動強度はBorg11〜13が目安
- 歩行訓練・有酸素運動・筋力訓練の負荷調整に使える
- 患者が遠慮して低く答える場合がある
- 数値だけでなく表情・呼吸・顔色などの観察を合わせる
- Borg指数は記録するだけでなく運動負荷設定に活かす
- 毎回同じ聞き方で確認すると変化を追いやすい

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