30代は、理学療法士にとってキャリアの大きな“分岐点”です。
後輩指導が増え、委員会や調整役も任され、家庭との両立も重くなる。
そしてふとした瞬間に、
- 「自分はこのままでいいのか?」
- 「今の働き方を40代・50代まで続けられるのか?」
そんな不安が頭をよぎりやすくなります。
この記事では、30代PTが直面する“5つの壁”を深掘りし、
キャパオーバーにならずに前へ進むためのヒントをまとめました。
30代理学療法士が直面する「5つの壁」
1.後輩指導と自分の臨床の両立が難しい
新人・若手への指導が増え、その分だけ自分の評価や治療に使える時間が圧迫されます。
丁寧に教えたい気持ちはあるのに、自分の患者さんの状況も気になる…。
結果として「どちらも中途半端になっているのでは?」というモヤモヤを抱えやすくなります。
2.業務量の増加による“慢性的な時間不足”
委員会、担当患者数、家族対応、カンファレンス、チーム調整…。
20代より求められるものが一気に増え、毎日が常に時間との戦いになりがちです。
「今日は早く帰ろう」と思っていても、結局残業になってしまう。
そんな日々が続くと、心身ともに疲労が蓄積していきます。
3.技術の伸びが鈍化し、「成長していない」焦り
20代の頃は、新しい知識や手技を学ぶたびに成長を実感しやすい時期でした。
一方で30代になると、基礎的な技術は一通り身につき、
“目に見えるわかりやすい成長”が減ってきます。
その結果、
- 「自分だけ成長が止まっているのでは?」
- 「若手の方が吸収が早い気がする…」
といった焦りや劣等感を抱きやすくなります。
4.家庭と仕事の両立ストレス
30代は、仕事以外の役割も増える年代です。
- 結婚・パートナーとの生活
- 妊娠・出産・育児
- 住宅ローンや家計のプレッシャー
- 親の体調不安や介護の入り口
勤務時間だけでなく、家に帰ってからもやることが多くなり、
自分のための勉強や休息の時間を取りづらくなります。
5.キャリアの方向性が見えず「キャリア迷子」になる
臨床を続けるのか、管理職を目指すのか、外来や訪問に移るのか、
あるいは副業・複業も視野に入れるのか…。
選択肢が増える一方で、
- 「結局、自分はどこを目指せばいいのか」
- 「このまま今の職場で続けて良いのか」
といった“キャリア迷子”状態に陥りやすくなります。
なぜ30代は壁を感じやすいのか?
中堅ポジションに固定される
30代は、新人でもベテランでもない“中堅”として見られます。
上からは「任せられる人」として仕事が降りてきて、
下からは「頼れる先輩」として相談が集まりやすくなります。
その結果、
「常に誰かの期待に応え続けるポジション」になりがちです。
仕事の整理や効率化を誰も教えてくれない
役割は増えていくのに、
- どうやって業務を整理するのか
- どこまで引き受けるべきなのか
- どこからは「NO」と言ってよいのか
といった“仕事のさばき方”は、ほとんどの職場で体系的に教わる機会がありません。
そのため、つい20代と同じように「気合い」で乗り切ろうとして、キャパオーバーになりやすいのです。
生活負荷の増加
仕事だけでなく、プライベートの役割も重くなることで、
「疲れているのに、常にフル回転」という状態になりやすくなります。
体力だけで押し切れる20代とは違い、
30代は「どうエネルギーを配分するか」を考える必要が出てきます。
成長スピードの鈍化
ある程度の経験を積んだことで、
「ゼロから一気に伸びる」というフェーズは過ぎていきます。
そのため、成長していないわけではないのに、
本人の体感としては「変化が見えにくい」時期でもあります。
30代PTの「乗り越え方」4つの方向性
1.“やらない仕事”を決めて負担を減らす
30代でまず取り組みたいのは、「減らすこと」です。
頑張り屋の人ほど、全部を抱え込んでしまいがちですが、
その状態が続くと、いつか必ず限界が来ます。
例えば、次のような視点で、仕事を見直してみます。
- 誰がやっても変わらない仕事
- 目的が曖昧な資料作成や会議
- 惰性で続いているだけのルーチン
「本当に自分がやるべきか?」という視点で一度立ち止まり、
他の人に任せる・頻度を減らす・やめるといった選択肢を検討してみてください。
2.指導を“テンプレ化”して属人化をやめる
後輩指導に毎回ゼロから対応していると、精神的な消耗が大きくなります。
そこでおすすめなのが、指導を「テンプレート化」することです。
例えば、
- 評価の流れ(観察→問診→機能評価→環境)
- 治療立案のステップ
- フィードバックの基本フォーマット
- 1日の振り返り用の簡単なシート
などをあらかじめ用意しておき、
同じ型を使って指導するだけでも、かなり負担が軽くなります。
「誰が教えても同じレベルの指導ができる」状態がつくれると、
自分が抱え込まなくてもチーム全体で育てていけるようになります。
3.技術より“判断スピード”を磨く
30代の臨床で重要になってくるのは、
「どの患者さんに、何を優先するか」を素早く決める力です。
新しい手技や評価を増やすことも大切ですが、
それ以上に、
- この患者さんにとって一番の課題は何か?
- 今日のセッションで必ず押さえるべきポイントはどこか?
- どこまでを自分の役割とし、どこからは他職種に任せるか?
といった「判断の軸」を持てるかどうかが、仕事の質とスピードを左右します。
判断スピードが上がると、
- 無駄な検査や介入が減る
- 患者さんや家族との説明がシンプルになる
- 結果的に時間的な余裕も生まれる
という良い循環が生まれてきます。
4.キャリアの方向性を言語化する
30代は、本格的に「この先どう働くか」を考えるタイミングでもあります。
ざっくりとした方向性は、次の4つに分けられます。
- 臨床特化:特定の領域(脳卒中・整形・呼吸など)を深めていく
- 管理職ルート:主任・係長など、マネジメントに比重を置いていく
- 働き方チェンジ:外来や訪問、非常勤の組み合わせなどで負担を調整する
- 副業・複業:講座・執筆・SNS発信・Webなどで収入や役割の柱を増やす
大切なのは、「何となく現状維持」から一歩抜け出して、
自分が進みたい方向を言葉にしてみることです。
紙に書き出してみるだけでも、
- 今の職場で続けるのか
- 違う分野に挑戦してみるのか
- 副業も少しずつ始めてみるのか
といった選択肢が整理され、モヤモヤが少しずつ減っていきます。
まとめ:30代は“整理と選択”が成功のカギ
20代が「経験を積み重ねる時期」だとすれば、
30代は「増えてきた役割や選択肢を整理し、選び取る時期」です。
そのためにできることは、決して特別なことではありません。
- やらない仕事を決める
- 後輩指導をテンプレ化して負担を減らす
- 技術より“判断の軸”を磨く
- 自分のキャリアの方向性を言語化する
これらを少しずつでも実行していくことで、
キャリア迷子から抜け出し、40代以降の働き方に余裕と選択肢を増やすことができます。
「今のままでいいのかな」と感じている30代PTこそ、
一度立ち止まり、自分の働き方を見直してみてください。
その小さな一歩が、数年後の大きな安心につながっていきます。


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