理学療法士が押さえておきたい歩行評価の基本|歩幅・歩隔・歩行率の基準値と臨床活用

臨床スキル・実践知識

歩行評価では、歩幅・歩隔・歩行率といった数値を測定する場面が多くあります。
しかし臨床では、「測ったけれど、どう判断すればいいのか分からない」と感じることも少なくありません。

私自身も、
「歩幅○cm」「歩行率○歩/分」と記録することが目的になってしまい、
その数値をどう臨床判断につなげるかまで整理できていませんでした。

歩行評価で本当に大切なのは、
数値そのものではなく、その数値が示している動きの選択代償を読み取ることだと思います。


歩幅・歩隔・歩行率は「単独」で評価しない

まず押さえておきたいのは、
歩幅・歩隔・歩行率には、それぞれ明確な転倒カットオフ値が設定されているわけではないという点です。

身長・年齢・疾患・環境要因の影響が大きく、
単独の数値だけで「安全」「危険」を判断することはできません。

そのため臨床では、
数値の絶対値よりも、組み合わせと変化を見る視点が重要になります。


歩幅から読み取れる臨床的な視点

歩幅は、推進力や下肢機能を反映しやすい指標です。
ただし、歩幅が短い=すぐに危険、というわけではありません。

注意したいのは、

  • 左右差が大きい
  • 疲労や注意分散で急に短くなる
  • 速度を上げても歩幅が伸びない

といった変化の乏しさや不安定さです。

歩幅が一定に保てない場合、
立脚期での支持や重心移動に不安がある可能性が考えられます。


歩行率(ケイデンス)を見るときの考え方

歩行率もまた、単独での良否判断は難しい指標です。

たとえば、

  • 歩行率が高く、歩幅が十分に出ない場合
    → 一歩ごとの支持時間を短くすることで、不安定さを補おうとしている可能性があります
  • 歩行率が低く、立脚が不安定な場合
    → 支持時間を延ばしても安定性が確保できていない可能性があります

重要なのは、
歩行率を変化させたときにも、動きの安定性が保たれるかという視点です。

テンポを落としても体幹や下肢の制御が大きく乱れないか、
少し速くしても左右差やふらつきが強まらないか。

こうした変化への対応力が低い場合、
転倒リスクを考える必要があると判断します。


歩隔は「広いか狭いか」では判断しない

歩隔は、安定性を高めるための戦略として広がることもあります。
そのため、歩隔が広い=悪いとは一概に言えません。

ただし、

  • 側方への崩れが多い
  • 状況によって歩隔が大きく変動する
  • 方向転換時にさらに広がる

といった場合は、
側方制御の不安定さを代償的に補っている可能性があります。

歩隔は安定化の工夫なのか、不安定さの表れなのかを見極める必要があります。


歩行評価に「明確なカットオフ」はあるのか

歩幅・歩行率・歩隔について、
「この数値を超えたら転倒しやすい」と言える明確な基準はありません。

臨床で重要なのは、

  • 数値の大きさ
  • 左右差
  • 状況変化への対応
  • 他の指標との組み合わせ

これらを総合的に解釈することです。

数値はあくまで、
動きの背景を考えるための材料として使うことが、
歩行評価を臨床に活かすポイントになります。


まとめ|数値は「判断の出発点」

歩幅・歩隔・歩行率は、
記録すること自体が目的ではありません。

それぞれの数値が示している
「どの局面で不安定なのか」
「どんな代償が使われているのか」
を読み取ることで、評価は意味を持ちます。

数値を並べるだけで終わらせず、
臨床判断につなげる視点を持つことが、
歩行評価の質を高める第一歩になります。

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