若手PTが戸惑いやすい「家屋評価」…何を見ればいい?
「玄関の段差は測ったけど、これで十分?」「トイレの広さってどう見ればいいの?」
そんな不安を感じたことはありませんか?
家屋評価は、退院後の生活を安全に・快適に送るための環境調整に欠かせないプロセスですが、実践経験がないと戸惑いやすい分野です。
若手理学療法士が最低限押さえておきたいのは、「その人が、どのように生活するか?」を具体的にイメージしながら評価すること。
この記事では、現場で役立つ7つのチェックポイントを紹介します。
家屋評価で見るべき7つのチェックポイント
- 玄関の出入り・段差
- 居室からトイレ・浴室までの動線
- トイレの形状と立ち座り環境
- 浴室の出入り・洗体動作
- ベッド周囲のスペースと高さ
- キッチンや生活スペースでの動作再現
- 家族・介護者の導線・介助スペース
① 玄関の出入り・段差
玄関は「外と中」をつなぐ重要なポイント。段差の有無・高さはもちろんですが、以下のような点も確認しましょう:
- 靴を脱ぎ履きする際に座る場所があるか(玄関椅子の設置も含め)
- ドアは開けやすい構造か(重さ、開き戸・引き戸)
- 濡れて滑りやすい箇所がないか
- 雨除け・傘の収納位置など、天候に対する備え
外出意欲や生活範囲にも直結するため、安全性+使いやすさ+心理的ハードルの低さまで意識したいところです。
② 居室からトイレ・浴室までの動線
屋内の移動動線は、「実際に動作を再現しながら」確認するのが基本です。
- 廊下幅は車椅子や歩行器でも通れるか(※最低でも75~80cm、90cm以上が理想)
- 段差がなくても、敷居のわずかな高さでつまずくことがある
- 扉の種類や開閉方向が動線を邪魔していないか
- 夜間に移動する場合の照明や足元の明るさ、センサーライトの有無
「移動できるかどうか」ではなく、“安全に・疲れず・迷わず”行けるかを確認しましょう。
③ トイレの形状と立ち座り環境
トイレ動作は自立支援の要。特に立ち座りの難しさ・スピード感・空間の広さが評価の要点です。
- 便器の高さは、身長・下肢筋力と合っているか(高すぎてもNG)
- 手すりの設置場所と使いやすさ(L字手すり or 縦手すり)
- トイレットペーパーや水洗レバーの位置は無理なく届くか
- 車椅子や介助者が入るスペースがあるか
日中と夜間で動作の安定性が変わることもあるため、生活時間帯ごとの使いやすさも確認できるとベストです。
④ 浴室の出入り・洗体動作
入浴はADLの中でも身体的にも心理的にもリスクが高い場面。事故が多発する場所でもあるため、慎重に確認します。
- 浴槽の高さ・またぎ幅と、本人のバランス能力のマッチング
- 洗い場に椅子を置いて座位保持ができるか、洗体時の転倒リスクはないか
- シャワーのホース長さや、壁に設置された器具類の位置
- 冬場の寒さ対策や滑り止めマットの使用状況
「一人で入れるかどうか」ではなく、“安全に・気持ちよく・継続して使えるか”が大切です。
⑤ ベッド周囲のスペースと高さ
起き上がり、立ち上がり、移乗、着替え…ベッド周りは1日の始まりと終わりに使う重要な場所です。
- ベッドの高さは立ち上がりやすいか(膝関節が約90度になる目安)
- ベッドからトイレまでの動線、夜間の足元照明はあるか
- ベッド柵や手すりの設置スペース、布団 vs 介護ベッドの選択
- 車椅子からの移乗スペースや、介助者の立ち位置も確保できるか
単に寝る場所ではなく、生活機能を支える拠点として評価しましょう。
⑥ キッチンや生活スペースでの動作再現
料理、洗濯、掃除などのIADL(手段的日常生活動作)の可否は、生活の自立度や生きがいにも大きく関係します。
- 調理台やシンクの高さ、使う家電製品の位置(電子レンジ、炊飯器など)
- 作業スペースでの立位保持の可否、疲れやすさ
- 冷蔵庫の開け閉め、必要物品への到達動作
- 居間での立ち座りや、テレビやリモコンの位置なども評価対象に
実際に動作を一緒に行い、“どこで、どのように困りそうか”を可視化するようにしましょう。
⑦ 家族・介護者の導線・介助スペース
本人の動作能力がある程度あっても、介助環境が整っていないと在宅生活が破綻するケースは多く見られます。
- トイレ・入浴・ベッドでの介助位置に十分なスペースがあるか
- 介助者が腰を曲げずに動ける高さか
- 家族が夜間に動けるような構造・動線になっているか
- 介助者が「ここがやりづらい」と思っている点のヒアリング
介助のしやすさ=継続的な在宅生活の実現度です。
「支える側」の視点を忘れずに評価することが重要です。
まとめ|測ることより「生活を想像すること」が大切
家屋評価は、「段差を測る」「広さを確認する」ことだけが目的ではありません。
本当に必要なのは、
「この人がこの空間で、どう動き、どう生活していくか?」を想像すること。
本人のADL、活動意欲、環境、介助体制など、すべてを総合的に踏まえたうえで、
“無理なく、安全に、その人らしく暮らせるか”を考える視点が求められます。
若手の理学療法士でも、この7つのポイントをおさえることで、
現場で実践的な家屋評価ができるようになります。
ぜひ、日々の評価や退院支援に活かしてみてください。
コメント