理学療法士が転職を考えるとき、「どこを基準に比較したらいいのか分からない」という悩みは非常によくあります。
求人票には良いことが書かれていますが、実際の働きやすさは現場を見てみないと分からないものです。
その結果、「入ってみたら違った」「前の職場よりしんどい」というミスマッチも起こりやすくなります。
転職活動を進めるうえでは、理学療法士の転職サイトの選び方|目的別・タイプ別で最短に絞る のように、
自分に合った転職サイトを選ぶことも大切ですが、同じくらい重要なのが「転職先をどう比較するか」です。
そこで、15年以上PTとして働き、若手・中堅PTの相談に乗ってきた経験から、
転職先を比較する際に必ず見るべき5つの指標 をまとめました。
まずは、全体の指標を一覧で確認してみましょう。
理学療法士が転職先を比較するときに見るべき5つの指標
- 臨床業務の内容・専門領域との相性
- 年収・待遇・福利厚生
- 人間関係・マネジメント体制
- 働き方の柔軟性(担当患者数・残業・休み)
- キャリア形成・教育体制・スキルアップ環境
ここから、それぞれの指標を詳しく解説していきます。
1. 臨床業務の内容・専門領域との相性
理学療法士の働き方は、配属される領域によって大きく変わります。
- 急性期
- 回復期
- 維持期
- 外来
- 訪問
それぞれスピード、書類量、身体的負担、求められるスキルがまったく異なります。
特に多いのが「領域ミスマッチ」の悩みです。
向いていないのではなく、その領域が合っていないというケースはとても多いです。
例えば、
- 急性期から回復期に移ったら、ペースが合って働きやすくなった
- 回復期から外来に変わり、患者数は多いが自分のスタイルに合っていた
このように、業務内容と自分の得意・苦手が一致することで、働きやすさは大きく変わります。
まずは「自分がどの領域なら続けやすいか」をイメージしながら比較してみてください。
2. 年収・待遇・福利厚生
給与は生活に直結するため、比較するうえで欠かせません。
特にチェックしておきたいのは、次のポイントです。
- 基本給(手当込みではなく、ベースの金額)
- 手当(資格、住宅、皆勤、通勤など)の内容と金額
- 賞与・昇給の実績(過去実績を数字で確認)
- 年間休日数・週休の形態(完全週休2日かどうか)
- 有給取得率・希望休の取りやすさ
- 産休・育休制度・復帰実績
- 時短勤務制度の有無
求人票に良く見える条件が書かれていても、実際は違う…ということは珍しくありません。
特に残業については、見学でスタッフの退勤時間を見るのが最も信頼性が高い情報になります。
待遇は、長く安定して働けるかどうかの「土台」になる部分です。
現在の生活費・今後のライフプランと照らし合わせながら、慎重に比較していきましょう。
3. 人間関係・マネジメント体制
理学療法士の退職理由で最も多いのが「人間関係」です。
- 上司のタイプ(トップダウン型か、相談しやすいタイプか)
- 若手への指導スタイル(怒鳴る・詰めるではないか)
- 中堅への仕事の割り振り(負担が偏っていないか)
- 他職種との連携(OT・ST・Nsとの関係性)
- 職場全体の雰囲気(ピリピリしていないか)
どれだけ条件が良くても、職場の空気が合わないとストレスは大きくなります。
特に見落としがちなのは、
若手が委縮していないか、表情が暗くないかという点です。
ここを見るだけでも、ある程度職場の雰囲気が伝わってきます。
業務内容よりも「誰と働くか」で、働きやすさは大きく変わります。
見学のときは、スタッフ同士の会話や、カンファレンスの空気感も意識して見てみてください。
4. 働き方の柔軟性(担当患者数・残業・休み)
働き方は、心身の負担や長期的なキャリア継続に直結します。
次のような点を比較しておくと、入職後のギャップを減らせます。
- 1日の担当患者数(何人くらい診るのが標準か)
- 書類の量と締め切り(その日中か、月末かなど)
- 残業が発生する理由(書類・カンファ・送迎など)
- 委員会やカンファレンスの回数・拘束時間
- 希望休の通りやすさ(家庭の予定に合わせやすいか)
- 通勤時間・交通手段
特に若手のうちは、業務量が多すぎると燃え尽きやすくなります。
「忙しいけれど、やりがいがある」のか、
「忙しすぎて、ただこなすだけになっている」のかでは、心身の負担が大きく違います。
給料だけではなく、無理なく続けられる働き方かどうかを重視して比較してみてください。
5. キャリア形成・教育体制・スキルアップ環境
成長したい理学療法士にとって、教育体制は非常に重要です。
チェックしておきたいポイントとしては、次のようなものがあります。
- 新人教育の流れ(OJT・プリセプター制度の有無など)
- 中堅PTが孤立しないフォロー体制
- 院内勉強会・症例検討会の頻度
- 学会・研修への参加補助(費用・出張扱いの有無)
- 認定/専門PT取得への支援(費用補助・勤務調整など)
- マネジメント職へのキャリアパスがあるか
- 専門性を深めたいPTへの配慮やポジション
教育体制が整っている職場は、学んだことをすぐ臨床で活かすことができ、
モチベーションの維持にもつながります。
逆に教育体制が弱いと、
- ずっと独学で不安が続く
- 相談できる相手が少ない
- 自信が持てず、業務がつらく感じる
といった悩みが続きやすくなります。
将来どのようなPTになりたいかをイメージしつつ、
そのキャリアを支えてくれる環境かどうかも比較してみてください。
求人票だけでは分からない「本当に見るべきポイント」
求人票は“きれいに見せるための情報”が中心で、
実際の働きやすさや人間関係までは分かりません。
そのため、実態を知るためには見学と面接での質問が欠かせません。
見学でチェックしておきたいこと
- スタッフ同士の雰囲気(会話・表情・距離感)
- カンファレンスやミーティングの様子
- 休憩が実際に取れているかどうか
- 若手スタッフの動きや表情(疲れ切っていないか)
- 1日のスケジュール感(患者数と書類のバランス)
面接で必ず聞いておきたい質問
- 残業が発生する主な理由
- 1日の標準的な担当患者数
- 院内異動の有無と頻度
- 過去数年の離職率や平均勤続年数
- 書類作成のフロー(紙か電子カルテか、誰がどこまでやるか)
- 教育体制・研修費の扱い
これらを事前に確認しておくことで、「こんなはずじゃなかった」をかなり減らすことができます。
転職先を比較するときの優先順位
比較するときは、すべてを同じ重みで見るのではなく、
優先順位をつけて考えるのがおすすめです。
1. 生活・体調に関わる項目(最優先)
通勤時間、勤務時間、休日、人間関係など、
生活に直結する要素は最優先で考えましょう。
どれだけ条件が良くても、体調を崩してしまっては意味がありません。
2. キャリアに関わる項目
次に、業務内容や教育体制、スキルアップ環境など、
中長期的な成長に関わる部分を比較します。
「この職場で数年働いたとき、自分はどう成長しているか?」
という視点を持つと、判断しやすくなります。
3. 給与・待遇
給与や待遇は重要ですが、
最優先にするとミスマッチが起こりやすい部分でもあります。
働きやすさの土台が整っている職場であれば、
経験を積むことで、結果的に待遇改善につながるケースも多いです。
まとめ|「比較する基準」を持てば転職の失敗は大きく減る
理学療法士の転職は、
「何を基準に比較するか」を明確にするだけで、失敗の確率を大きく減らすことができます。
- 求人票だけで判断しない
- 見学と面接で“リアルな働きやすさ”を確認する
- 自分なりの優先順位を決めて比較する
あなたの価値観と働き方に合う職場は、必ず見つかります。
焦らず、納得できる選択をしながら、満足度の高い転職につなげていきましょう。
なお、転職サイトの選び方については、
理学療法士の転職サイトの選び方|目的別・タイプ別で最短に絞る で詳しく解説しています。
「まずはどのサイトに登録すればいいか知りたい」という方は、あわせてチェックしてみてください。


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