はじめに:転職後に感じる「え、思ってたのと違う…」を防ぐために
理学療法士はどの領域でも活躍できる分、職場を変えるだけで仕事内容や求められるスキルが大きく変わります。
私自身、転職を検討したときに感じた不安は、
- 求人票と実際の業務内容が違ったらどうしよう
- 残業や休日が取りづらい職場だったらしんどいかも…
- 本当に自分が成長できる環境なのか分からない
といった、いわゆる「転職後のギャップ」でした。
実際、先輩や後輩からもこんな声を聞きます。
「書類業務が多すぎて、リハの時間を十分に確保できない…」
「見学の時は良い雰囲気に見えたけれど、入職してみたら職場の空気感が想像と違っていた…」
「担当患者数が多くて、毎日時間に追われてしまう…」
こうしたギャップの多くは、
入職前の情報収集と確認の仕方を工夫することで、かなり防ぐことができます。
この記事では、理学療法士が転職するときに
「ここだけは押さえておきたい職場選びのポイント」をチェックリスト形式で整理していきます。
理学療法士が転職後に感じやすいギャップとは?
まずは、どんなところにギャップを感じやすいのかを整理してみます。
| ギャップの種類 | よくある例 |
|---|---|
| 労働環境 | 残業が多い/休日が取りづらい/当直や早番・遅番が多い |
| 患者層 | 想像していた疾患と大きく違う/ADLレベルが想定と違う |
| 教育制度 | フォロー体制がない/OJTと言いつつ実質放置に近い |
| 人間関係 | 多職種との連携が取りづらい/部署間の壁が厚い |
| 業務量・評価 | 書類業務が膨大/評価基準が不透明でモチベーションにつながらない |
入職後に「こんなはずじゃなかった…」と感じるのは、
このギャップを事前にイメージできていなかったことが原因の一つです。
入職後に後悔しないための7つのチェックリスト
ここからは、転職前に確認しておきたいポイントを、チェックリストとして整理していきます。
① 働き方・労働条件は具体的にイメージできているか
- 勤務時間(始業・終業)はどうか
- 残業は月にどれくらい発生するのか
- 早番・遅番・当直の有無と頻度
- 有給休暇は実際にどのくらい消化できているのか
- 持ち帰り仕事(自宅での書類作成など)はあるか
求人票には「残業ほぼなし」「有給取得しやすい」と書かれていても、
実態が伴っていないケースも少なくありません。
見学や面接のときに、
- 「1日のスケジュール」
- 「残業が発生しやすいタイミング」
などを具体的に聞いておくと、入職後のギャップをかなり減らせます。
② 患者層・疾患構成は希望と一致しているか
- 脳血管・運動器・内部障害など、どの領域が多いのか
- 回復期・急性期・維持期・外来・訪問などの割合
- 高齢者中心か、比較的若年層が多いのか
- ADLレベルはどのあたりの方が多いのか
自分が今後伸ばしていきたい分野と、実際の患者層があまりにズレていると、
- スキルアップしたい領域で経験が積めない
- 思っていた臨床像と違い、モチベーションが続かない
といったことが起こりやすくなります。
見学の際に「担当している患者さんの典型例」を教えてもらうと、より具体的にイメージしやすくなります。
③ 担当患者数と業務量のバランスは取れているか
- 1日あたりの担当患者数は何名か
- 個別リハと集団リハの割合
- 書類作成の量(計画書・報告書・要約など)はどれくらいか
- カルテ記載にどのくらいの時間を使っているか
同じ「1日10単位」でも、
- 移動が多い環境なのか
- 書類やカンファレンスの比重が高いのか
によって、業務負担は大きく変わります。
余裕がなさすぎる職場では、振り返りや勉強の時間が取れず、結果的に「ただこなすだけ」の仕事になってしまいがちです。
④ 教育体制・フォローは機能しているか
- 新人や中途採用者へのフォローはどうなっているか
- 担当の先輩や教育係は決まっているのか
- 院内勉強会の頻度やテーマ
- 学会・研修参加への補助や出張扱いの有無
「教育体制あります」と言われても、実際には「分からなければ聞いてね」というスタンスで、体系立ったフォローがない職場も存在します。
面接や見学の際には、
「中途採用で入職した人が、最初の3ヶ月でどんなフォローを受けていますか?」
のように、具体例ベースで聞いてみるのがおすすめです。
⑤ 評価制度やキャリアパスが見えているか
- 昇給・賞与の評価基準は明確か
- 役職やポジションのイメージが持てるか
- 認定・専門資格取得への支援の有無
- 将来的に任される可能性のある役割(教育担当、主任など)
年数だけで評価されるのか、取り組みや役割も評価に反映されるのかによって、中長期的なモチベーションが大きく変わります。
「何年目くらいでどんな役割を担う人が多いのか」
「評価面談はどのくらいの頻度で行われているか」
といった点も確認しておきたいところです。
⑥ 多職種との連携や職場の雰囲気はどうか
- カンファレンスでの発言のしやすさ
- 看護師・介護士・MSWなどとのコミュニケーションの様子
- PT同士の情報共有の仕方(朝のミーティング、終礼など)
多職種連携の雰囲気は、見学時の数十分でも意外と伝わってきます。
- 会話が最低限で、どこかピリピリしている
- お互いに声かけしながら動いていて、協力し合っている
など、現場の空気感はよく観察しておきたいポイントです。
⑦ 求人票には載っていない“リアルな情報”をどこまで把握できているか
- 離職者数や、直近数年の退職状況
- 在籍年数の分布(若手〜中堅〜ベテランのバランス)
- 実際の有給取得率
- 産休・育休からの復帰しやすさ
こういった情報は、求人票やホームページだけではなかなか見えてきません。
可能であれば、採用担当者だけでなく、実際に現場で働いている理学療法士にも話を聞けると、よりリアルな姿が見えてきます。
見学・面接で確認しておきたい質問例
見学や面接のときに、次のような質問をしてみると、職場の実態がかなり具体的に見えてきます。
- 理学療法士の1日のスケジュールを教えていただけますか?
- 1人あたりの担当患者数と、書類作成にかける時間の目安はどのくらいですか?
- 中途入職の方には、最初どのようなフォローをされていますか?
- カンファレンスや多職種での話し合いは、どのくらいの頻度で行われていますか?
- 理学療法士の在籍年数や年齢層のバランスはどのような感じですか?
- ここ数年で退職された方の主な理由を、差し支えない範囲で教えていただけますか?
質問に対して、
- 曖昧な返答が多い
- 詳細を濁すような印象が強い
という場合は、少し注意して様子を見た方がよいかもしれません。
求人票だけでは分からない“見抜きポイント”
見学のときには、説明される内容だけでなく、現場の「雰囲気」や「流れ」にも目を向けてみてください。
- 病棟やリハ室は片付いているか、物品は整理されているか
- スタッフ同士の声かけは多いか、表情はどうか
- カルテは紙中心か、電子カルテか(業務効率に直結)
- リハスタッフが常に時間に追われてバタバタしていないか
こういった点からも、
- 日々の業務にどれくらい余裕がある職場なのか
- チームとして協力し合えているのか
といったことがある程度見えてきます。
まとめ:自分の「軸」を持って職場を選ぶ
完璧な職場はありませんが、自分が大切にしたいことを明確にしておくと、転職の満足度はぐっと高まります。
- どんな患者さんと関わっていきたいのか
- どんな働き方をしていきたいのか
- どんな理学療法士として成長していきたいのか
このあたりの「自分の軸」を1つずつ言語化しておくと、求人票や見学で得た情報の“見え方”が変わってきます。
今回のチェックポイントを参考にしながら、
「転職して良かった」と思える選択ができるよう、じっくり職場を見極めていきましょう。


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