理学療法士のためのMMT完全ガイド|正しい測定方法と段階判定のポイント

臨床スキル・実践知識

理学療法士として働き始めた頃、MMT(徒手筋力検査)の判定で何度も迷いました。「重力に抗して動くから3?それとも4?」「この抵抗は弱いから4-?」と、先輩に確認しながら評価していた記憶があります。

MMTは筋力を客観的に評価する基本ツールですが、判定基準があいまいで評価者間で点数がずれやすいという課題があります。

この記事では、MMTの基本から正しい測定方法、臨床で迷いやすいポイントまで、15年以上の経験をもとに解説します。

MMT(徒手筋力検査)とは?

MMTの目的と役割

MMT(Manual Muscle Testing:徒手筋力検査)は、検者の手で抵抗を加えながら筋力を評価する方法です。特別な機器を必要とせず、ベッドサイドや外来診察室でも実施できる手軽さが最大の利点です。

MMTの主な目的は、筋力の程度を6段階で評価し、筋力低下の程度を把握することです。脳卒中後の片麻痺、整形外科術後の筋力低下、廃用症候群など、幅広い疾患で活用されます。

理学療法評価での位置づけ

MMTは、ROM(関節可動域)評価と並んで、理学療法の基本評価です。初回評価で必ず実施し、治療効果の判定や目標設定にも活用します。

ただし、MMTは「最大筋力」を評価するものであり、持久力や協調性は評価できません。そのため、実際のADL動作能力とは必ずしも一致しないことを理解しておく必要があります。

MMTの基本|6段階評価

6段階評価の基準

MMTは0から5までの6段階で評価します。

5(Normal:正常):重力に抗して完全可動域を動かし、強い抵抗に耐えられる

4(Good:良):重力に抗して完全可動域を動かし、中程度の抵抗に耐えられる

3(Fair:可):重力に抗して完全可動域を動かせるが、抵抗には耐えられない

2(Poor:不可):重力を除去した状態であれば完全可動域を動かせる

1(Trace:わずか):筋収縮は触診で確認できるが、関節運動は起こらない

0(Zero:ゼロ):筋収縮が全く認められない

プラス・マイナス記号の使い方

各段階の中間を評価する場合、プラス(+)とマイナス(-)を使います。

例えば、「重力に抗して完全可動域を動かせるが、抵抗は少ししか耐えられない」場合は3+と判定します。「重力に抗して動けるが、完全可動域まで到達しない」場合は3-です。5+や0-という表記は存在しません。

重力と肢位設定の原則

MMTで最も重要なのが、重力の影響を考慮した肢位設定です。3以上の評価では重力に抗した肢位(抗重力位)、2以下の評価では重力を除去した肢位(除重力位)で測定します。例えば、膝伸展筋力を測定する場合、座位で膝を伸ばす動作で評価します(3以上)。2以下なら側臥位で測定し、重力の影響を受けない状態で筋収縮を確認します。

MMTの正しい測定方法

測定前の準備(説明・肢位・固定)

MMTを正確に測定するには、事前の準備が重要です。

まず、患者に測定の目的と方法を説明します。「膝を伸ばす力を測ります。私が手で抵抗をかけるので、力いっぱい伸ばしてください」といった具体的な指示を出します。

次に、肢位を設定します。抗重力位か除重力位かを判断し、適切な姿勢をとってもらいます。このとき、代償動作が起きないよう、体幹や近位関節を固定することが大切です。

以前、大腿四頭筋のMMTで、体幹が後方に倒れて腸腰筋の代償が入ってしまったケースがありました。座位保持が不安定な患者では、背もたれを使うなど工夫が必要です。

重力を考慮した肢位選択

3以上の評価では、重力に抗した肢位で測定します。大腿四頭筋なら座位、腸腰筋なら座位または背臥位、ハムストリングスなら腹臥位が基本です。重力の方向を意識することが、正確な評価のカギです。

抵抗のかけ方と触診

4以上を評価する場合、抵抗をかけます。抵抗は、筋の作用方向と逆方向にかけ、徐々に力を強めていきます。

抵抗をかける位置も重要です。膝伸展なら下腿遠位部、股関節屈曲なら大腿遠位部にかけます。関節に近すぎるとテコの原理で正確に評価できません。

また、2以下を評価する場合は、触診で筋収縮を確認します。筋腹を触診しながら、「力を入れてください」と指示し、わずかな収縮でも見逃さないようにします。

脳卒中後の患者さんで、視覚的には動きがわからなくても、触診すると筋収縮がわずかに確認できることがありました。この場合は1と判定します。

代償動作の見抜き方

MMTで最も難しいのが、代償動作を見抜くことです。

例えば、中殿筋のMMTで、体幹を側屈させて股関節外転を代償するケースがあります。骨盤の動きをしっかり固定し、股関節のみが動いているか確認する必要があります。

また、大腿四頭筋のMMTで、足関節の背屈や体幹の後傾で代償するケースもあります。こうした代償動作を見逃すと、実際より高い評価をしてしまいます。

代償動作を防ぐには、近位関節の固定、動作の観察、触診での筋収縮確認の3つを徹底することです。

判定で迷いやすいポイント

5と4の違い(正常な抵抗量とは)

5と4の境界は、「強い抵抗」に耐えられるかどうかです。しかし、「強い抵抗」の基準が曖昧で、評価者間でばらつきが出やすいポイントです。

目安としては、検者が体重をかけても耐えられるレベルが5、検者の腕の力だけで押し負けるレベルが4です。ただし、検者の筋力によって変わるため、複数人で評価を統一することが重要です。

若い男性患者の大腿四頭筋を評価したとき、私が全力で抵抗をかけても膝が伸びたため5と判定しました。しかし、先輩が評価すると「もう少し強い抵抗が必要だから4+」と判定され、評価者間で認識を統一する難しさを実感しました。

4と3の境界(完全可動域を動けるか)

4と3の境界は、抵抗に耐えられるかどうかです。

3は「重力に抗して完全可動域を動かせる」が「抵抗には耐えられない」状態です。少しでも抵抗をかけると動きが止まってしまう場合は3と判定します。

逆に、少しでも抵抗に耐えられる場合は4-と判定します。この境界は、軽く抵抗をかけてみて判断します。

3と2の違い(重力除去での判定)

3と2の違いは、重力に抗して動けるかどうかです。

重力に抗して少しでも動ければ3-以上、重力に抗して動けなければ2以下です。ただし、肢位によって重力の影響が変わるため、正確な肢位設定が必要です。

脳卒中の患者さんで、座位では膝が伸びないが、側臥位なら完全可動域を動かせる場合、MMTは2です。重力を除去すれば動けるが、重力には抗せないという判定です。

2と1の判定(触診での確認)

2と1の違いは、関節運動が起こるかどうかです。

2は「重力を除去すれば完全可動域を動かせる」状態、1は「筋収縮はあるが関節運動は起こらない」状態です。視覚的に動きが見えるかどうかがポイントです。

ただし、わずかな動きを見逃さないよう、注意深く観察することが大切です。また、1の判定では、触診で筋収縮を確認します。

主要筋群の測定ポイント

大腿四頭筋(膝伸展)

座位で膝を90度屈曲位から伸展させます。抵抗は下腿遠位部にかけます。足関節背屈や体幹後傾による代償に注意が必要です。

ハムストリングス(膝屈曲)

腹臥位で膝を90度屈曲させます。抵抗は下腿遠位部にかけます。股関節伸展や骨盤の後傾による代償に注意します。

腸腰筋(股関節屈曲)

座位または背臥位で股関節を屈曲させます。抵抗は大腿遠位部にかけます。体幹の前傾や骨盤の後傾で代償しやすいポイントです。

中殿筋(股関節外転)

側臥位で股関節を外転させます。抵抗は大腿遠位部にかけます。体幹の側屈や骨盤の挙上による代償を見逃さないことが重要です。

MMTを臨床に活かす方法

リハビリ目標設定への活用

MMTの結果は、リハビリの目標設定に直結します。大腿四頭筋がMMT3の場合、「重力に抗して膝を伸ばせる」状態ですが、立ち上がりや階段昇降には筋力が不足しています。そのため、「MMT4まで改善させる」という具体的な目標を設定できます。

筋力増強訓練の負荷設定

MMT2以下の場合は重力を除去した肢位で自動運動を行います。MMT3の場合は重力に抗した自動運動、MMT4以上の場合はセラバンドや重錘を使った抵抗運動が効果的です。

脳卒中の患者さんで、大腿四頭筋がMMT3から4に改善したタイミングでセラバンドを使った抵抗運動を開始したところ、立ち上がりや階段昇降の動作が安定し、自宅退院につながりました。

MMT評価の注意点

疼痛や痙縮がある場合

疼痛がある場合、筋力を正確に評価できないことがあります。この場合は「疼痛のため評価困難」と記録し、疼痛が軽減してから再評価します。

痙縮がある場合も、抵抗が増大して実際の筋力より低く評価される可能性があります。ゆっくりと動かして痙縮の影響を減らすか、Modified Ashworth Scale(MAS)で痙縮の程度を併記します。

評価頻度

MMTは、初回評価、月1回の定期評価、状態が大きく変化したタイミングで実施します。筋力は短期間では大きく変化しないため、週単位での評価は不要です。

まとめ

MMTは、筋力を客観的に評価する基本ツールです。6段階評価を正確に行うことで、リハビリの目標設定や治療効果の判定がスムーズになります。

評価で迷ったときは、重力・肢位・触診の3要素を意識してください。また、代償動作を見抜くことが正確な評価のカギです。

臨床でMMTを活用し、患者の筋力向上と機能改善につなげていきましょう。

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