理学療法士が押さえる筋緊張評価の基本|MAS・Tardieu Scaleの正しい使い方と活用ポイント

臨床スキル・実践知識

臨床で患者さんの筋緊張を評価する場面は多いですが、「MASとTardieu Scaleの違いがよくわからない」「どちらを使えばよいのか迷う」と感じたことはありませんか?

筋緊張の評価は、脳卒中後や脊髄損傷後の痙縮(spasticity)を正確に捉える上で欠かせません。本記事では、理学療法士が臨床で使いやすい筋緊張評価の基本と、代表的な指標であるMAS(Modified Ashworth Scale)MTS(Modified Tardieu Scale)の特徴・使い分けを整理します。


1. 筋緊張評価の目的を整理する

「筋緊張評価」は単に“硬さ”を測るのではなく、中枢神経障害による反射性筋活動の変化を定量的に捉えるための手段です。目的を明確にして評価法を選ぶことが重要です。

  • 変化の経過を追う(Before/After):リハ介入や投薬後の効果判定に用いる。
  • 日常生活への影響を把握する:動作中の抵抗や姿勢保持の難易度を理解する。

2. Modified Ashworth Scale(MAS)とは

MASは、最も一般的に使われる筋緊張の臨床評価法です。短時間で実施できる一方、主観的になりやすい課題もあります。

評価方法

  • 被験者をリラックスさせ、対象関節を一定の速度で他動的に動かす
  • 動かした際の抵抗感の強さを6段階(0〜4、1+含む)で評価。

判定基準(簡略)

スコア内容
0抵抗なし
1軽度の抵抗(動き出しにわずかな抵抗)
2明確な抵抗があるが容易に動かせる
3著明な抵抗があり他動運動が難しい
4固縮(ほぼ動かせない)

メリット・デメリット

メリットデメリット
実施が簡単で短時間。臨床で使いやすい。速度依存性を反映しにくく、評価者間のばらつきが大きい。

3. Modified Tardieu Scale(MTS)とは

MTSは、痙縮の速度依存性をより正確に評価できる指標です。関節を異なる速度で動かし、どの角度で急に抵抗が強くなるか(R1)と、ゆっくり動かしたときの最大可動域(R2)を測定します。

評価速度(V1〜V3)

  • V1:できるだけゆっくり(受動ROMと同程度)
  • V2:重力に任せた自然な速度
  • V3:できるだけ速い速度(最大速度)

評価の読み方

  • R1:急に抵抗が強くなった角度(「引っかかり」の出現角度)
  • R2:ゆっくり伸ばしたときの最大可動域
  • R2−R1:差が大きいほど速度依存的な筋過緊張の影響が強い

反応の質(スコア例)

スコア内容
0筋緊張なし
1軽度の抵抗(わずかな「引っかかり」)
2明確な抵抗、すぐに緩む
3顕著な抵抗、可動域制限あり
4強い抵抗で可動域わずか
5他動的に動かせない

例:R1=70°、R2=120°なら、R2−R1=50°で速度依存的な過緊張の影響が大きいと解釈。


4. MASとMTSの使い分け

観点MASMTS
評価時間短い(数分)やや長い
精度主観的客観的(再現性高い)
特徴全体的な“硬さ”をざっくり把握速度依存性と角度を定量評価
適用場面外来・ベッドサイド・日常的経過観察詳細評価・研究・痙縮治療前後の効果判定

結論:時間が限られる場面ではMAS、痙縮治療の適応検討や効果判定など変化を角度で可視化したい場面ではMTSが有効です。


5. 評価時の注意点(再現性を高めるコツ)

  • 体位・姿勢を統一(背臥位/座位など、毎回同じ条件)
  • 速度・角度のばらつきを減らす(MTSはV1〜V3を明記)
  • 疼痛・拘縮の影響を除外(抵抗=疼痛反応にならないよう配慮)
  • 記録の共通言語化(関節名・筋名・体位・速度・R1/R2を記載)

6. まとめ:臨床でのおすすめの使い方

  • 日常臨床や経過観察:まずはMASで全体傾向を把握
  • 痙縮の程度・治療効果判定:MTSで速度依存性と角度を定量化

「MASで全体を捉え、MTSで変化を追う」——この組み合わせが、臨床で実行しやすく、意思決定にもつながります。筋緊張の評価は、スコアづけに留まらず、治療方針や患者理解の出発点です。評価の意味を捉えて活用し、より適切なアプローチへつなげましょう。

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