理学療法士がおさえておきたい体幹機能評価|座位・立位姿勢で見る骨盤と脊柱アライメントのポイント

臨床スキル・実践知識

はじめに

体幹機能を評価するうえで、最も基本となるのが「姿勢観察」です。姿勢は体幹の働きをそのまま映し出す鏡のようなものであり、姿勢の崩れは筋緊張のアンバランスや安定性の低下を反映しています。特に、骨盤や脊柱のアライメントは、体幹の安定性を理解するうえで欠かせない視点です。この記事では、座位・立位での姿勢観察のポイントと、骨盤・脊柱アライメントから体幹機能を読み取るコツを整理します。

姿勢評価が重要な理由

理学療法士が行う体幹機能評価の出発点は「姿勢をどう見るか」です。姿勢の状態は、筋活動のバランスや重心位置、そして動作時の安定性を反映しています。骨盤や脊柱の歪みは、動作の非効率や疼痛、転倒リスクの要因にもつながります。静的姿勢を丁寧に観察することで、体幹が「固定しすぎているのか」「支えきれていないのか」を判断することができます。

座位での姿勢評価のポイント

座位姿勢は、体幹の安定性とバランス制御を最もわかりやすく観察できる場面です。以下の点をチェックしていきましょう。

  • 骨盤の傾き(前傾・後傾・側方傾斜)
  • 坐骨での荷重の左右差
  • 頭部から骨盤までの軸の通り方
  • 上肢の支持(机・膝など)に頼っていないか

臨床のポイント:
・骨盤が後傾している場合、脊柱はCカーブになり、体幹筋活動が低下しやすい。
・骨盤前傾が強い場合は腰椎伸展・骨盤底筋の過緊張を招くことがある。
・「骨盤を立てる」よりも「坐骨で支える」意識が安定性の鍵。
座位では、上肢の支持に頼らず姿勢を保てるかどうかも確認します。姿勢保持に必要な最小限の筋活動でバランスが取れているかを観察しましょう。

立位での姿勢評価のポイント

立位姿勢は、体幹と下肢の協調性をみるうえで欠かせません。以下のポイントを意識して観察します。

  • 頭部・肩甲帯・骨盤・膝・足部の垂直ライン
  • 前後・左右の重心位置
  • 脊柱のS字カーブ(過前弯・平背・側弯)
  • 胸郭・腹部の張り出し方

臨床での見方:
・骨盤前傾位では腹横筋・多裂筋の活動が遅れ、代償的に下肢筋緊張が増す。
・後傾位では下肢に頼った支持パターンとなり、安定性が低下しやすい。
・バランス戦略(Ankle・Hip)を確認すると、安定性の特徴がより明確に分かる。
立位では、骨盤の位置だけでなく重心の通り道を確認することが大切です。体幹の伸展・屈曲のバランスが取れている姿勢は、無理のない安定した立位につながります。

骨盤と脊柱アライメントから見る体幹機能

骨盤と脊柱の関係は、体幹の姿勢制御を理解するうえで非常に重要です。

  • 骨盤前傾:体幹伸展優位・腹圧が低下しやすい
  • 骨盤後傾:体幹屈曲優位・背筋群の活動が低下
  • 脊柱側弯:左右非対称な筋活動・回旋代償が生じやすい
  • 骨盤回旋:歩行や立ち上がり動作で非対称性が出やすい

臨床の視点:姿勢を「良い・悪い」で評価するのではなく、「なぜこの姿勢を取っているのか」「どの筋・関節が関与しているのか」を考えることが大切です。姿勢の背景には、筋活動パターン・感覚入力・習慣的な動作など、複数の要因が関係しています。

姿勢評価で見落としがちなポイント

  • 呼吸パターン(胸式/腹式の偏り)
  • 足底荷重の偏りと骨盤位置の関係
  • 座位から立位への変換時に姿勢軸が保てているか

評価のヒント:静的な姿勢だけでなく、座位から立位への移行など動作中の姿勢変化を見ることで、体幹制御の実力をより正確に把握できます。また、動作中にどの関節が主に動き、どの部分が安定しているかを観察すると、体幹筋群の役割や制御の特徴がより明確になります。

臨床応用:評価結果をどう活かすか

姿勢の崩れを「筋力低下」と捉えるだけでは不十分です。むしろ、体幹や骨盤周囲の筋活動パターンの偏りを読み取ることが重要です。

  • 支持面や骨盤位置を少し調整するだけで体幹筋活動が変わることが多い
  • 姿勢評価を「治療前後の変化」を見る指標として活用する
  • 写真・動画で記録すると、本人にも変化を実感してもらいやすい

体幹評価は“分析して終わり”ではなく、“介入に活かす”ことが目的です。姿勢観察から導かれた気づきを、治療方針に反映させましょう。

まとめ|姿勢評価は体幹機能を読み解く第一歩

姿勢観察は、体幹機能評価の出発点であり、臨床の基礎です。骨盤と脊柱のアライメントを理解することで、安定性・協調性・姿勢制御の全体像が見えてきます。姿勢の見方を深めることは、リハビリの質を高める第一歩。次回は、「動作中の体幹制御と重心移動の見方」について、さらに実践的な体幹評価の方法を解説します。

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