SLRテスト、なんとなく「硬い」で終わっていませんか?
SLRテストは、理学療法士なら誰もが日常的に行う評価のひとつです。
しかし実際の臨床では、
「60°だから硬いですね」
「痛いから神経症状かな」
このように、なんとなくの印象で終わってしまうことも少なくありません。
私自身も新人の頃は、
「角度が出ない=ハムストリングス短縮」
と単純に考えていました。
でも経験を重ねる中で気づいたのは、
SLRは“挙上角度を見るテスト”ではなく、
“症状をどう解釈するかのテスト”だということです。
同じ60°でも、
筋肉なのか、神経なのかで、アプローチは全く変わります。
今回は、臨床で役立つ
「ハムストリングス短縮と神経症状を見分ける視点」
について整理していきます。
結論|角度より「症状の質」と「変化」を見る
結論から言うと、
SLRテストで最も大切なのは角度ではありません。
本当に見るべきなのは、
・どこに症状が出るか
・どんな痛みや違和感か
・姿勢や追加操作で変化するか
この3点です。
角度だけでは、筋か神経かは判断できません。
「症状の質」と「変化」を観察して、はじめて評価になります。
ここがSLRテストの一番のポイントだと感じています。
まずはSLRテストで何を評価しているか
SLRテストでは主に、
・坐骨神経の伸張性
・ハムストリングスの柔軟性
・神経根症状や椎間板由来の痛み
などを総合的に評価しています。
つまり、単純な「筋長テスト」ではありません。
筋・神経・脊椎由来の問題が混在する評価だからこそ、
解釈力が求められるテストなのです。
ハム短縮か神経症状かを見分ける5つのポイント
① 症状の出る部位を見る
大腿後面のつっぱり感のみで止まる場合は、ハムストリングス短縮の可能性が高いです。
一方で、下腿や足部まで放散する痛みやしびれが出る場合は、神経症状を疑います。
「どこまで症状が広がるか」は最初に必ず確認しています。
② 痛みの性質を聞く
筋由来の場合は、
「つっぱる」「伸ばされる感じ」
神経由来の場合は、
「ビリビリ」「しびれる」「電気が走る感じ」
このように表現が大きく違います。
患者さんの言葉は、かなりヒントになります。
③ 頸部屈曲や足関節背屈での変化
SLR肢位で頸部屈曲や足関節背屈を追加したときに症状が増悪する場合は、神経伸張性が関与している可能性が高くなります。
逆に、変化がなければ筋要素が主体であることが多いです。
いわゆるスランプ要素の追加は、鑑別にとても有効です。
④ 左右差と可動域パターン
両側同程度に硬い場合は、単純な柔軟性低下の可能性が高いです。
しかし、片側だけ極端に制限される場合は、神経症状や椎間板病変などを疑います。
「非対称性」は重要なサインだと感じています。
⑤ エンドフィール・止まり方
弾性のある抵抗感でゆっくり止まるなら筋由来。
痛みや防御性収縮で急に止まるなら神経由来。
最終域の「止まり方」も、実は大きな判断材料になります。
回復期で感じた「SLRの解釈ミスあるある」
回復期で働いていたときの話です。
ある患者さんで、SLRが40°程度しか上がらず、
「ハムがかなり硬いな」と判断していました。
ストレッチ中心でアプローチを続けていましたが、
しかし翌日評価しても、角度自体はほとんど変わりませんでした。
「やっぱり単純に硬いだけかな」と思いながら、
改めて症状について詳しく話を聞いてみると、
「実は、少ししびれもあるんです」
と新たな訴えが出てきました。
さらに頸部屈曲を加えると症状が明らかに増強。
そこで初めて、
筋短縮ではなく神経伸張性が関与している可能性に気づきました。
角度ばかりに目が向いて、
「症状の質」をしっかり聞けていなかった自分の評価不足を痛感した瞬間でした。
この経験から、
SLRではまず“患者さんの感覚を丁寧に聞くこと”を最優先にしています。
SLRテストでやりがちな3つの落とし穴
よくある失敗も整理しておきます。
・角度だけを記録して満足する
・痛みの性質を詳しく聞かない
・追加テストを行わない
これでは「測定」だけで終わってしまいます。
SLRは「評価」まで行って、はじめて意味があるテストだと思っています。
まとめ|SLRは“挙上角度のテスト”ではなく“解釈のテスト”
SLRテストはシンプルに見えて、実はとても奥が深い評価です。
角度だけではなく、
・症状の部位
・痛みの質
・追加操作での変化
・左右差
・エンドフィール
こうした視点を組み合わせることで、はじめて鑑別ができます。
SLRは「どこまで上がるか」ではなく、
「なぜそこで止まるのか」を考えるテスト。
この視点を持つだけで、臨床での解釈が大きく変わります。
ぜひ明日からの評価で、意識してみてください。

コメント