Thomasテスト、なんとなく「浮いた=短縮」で終わっていませんか?
Thomasテストは、理学療法士なら誰もが一度は行ったことのある基本的な股関節評価です。
しかし実際の臨床では、
「太ももが浮いたから腸腰筋短縮ですね」
「とりあえずストレッチしておきましょう」
このように、なんとなく判定して終わってしまうことも少なくありません。
私自身も新人の頃はそうでした。
ですが回復期で多くの患者さんを担当する中で、
「Thomasテストの読み方が変わるだけで、治療結果が大きく変わる」
ということに気づきました。
Thomasテストは単なる筋短縮テストではありません。
姿勢・骨盤アライメント・代償動作まで含めて読む、いわば「股関節前面の運動制御評価」です。
この記事では、理学療法士の評価として本当に使えるThomasテストの見方を、臨床目線でわかりやすく解説します。
この記事でわかること【5つのポイント】
- Thomasテストの正しい実施手順
- 腸腰筋短縮の正確な判定方法
- よくある誤判定パターン
- 代償動作の見抜き方
- ストレッチや介入へのつなげ方
Thomasテストの基本|何を評価している検査か?
Thomasテストは、股関節伸展可動域を中心に評価する検査です。
主に評価しているのは以下の筋です。
- 腸腰筋
- 大腿直筋
- 大腿筋膜張筋(TFL)
教科書的には「腸腰筋短縮テスト」と説明されますが、実際の臨床ではそれだけでは不十分です。
股関節伸展には、
- 骨盤前傾・後傾
- 腰椎前弯
- 体幹の安定性
これらが強く関与しています。
つまりThomasテストは、「筋の長さ」だけでなく「姿勢と運動制御」を同時に見ている検査なのです。
これがThomasテストの臨床解釈で最も重要なポイントです。
正しい実施手順と判定基準
実施手順
- ベッド端に座位
- 片側股関節を最大屈曲し胸に抱え込む
- 骨盤後傾を保ったまま仰臥位へ
- 反対側下肢の位置を観察
判定の目安
- 大腿がベッドに接地 → 正常
- 大腿が浮き上がる → 腸腰筋短縮疑い
- 膝が伸展する → 大腿直筋短縮
- 外転・外旋する → TFL短縮
ただし、ここで「浮いた=腸腰筋短縮」と即断するのは危険です。
ここからが理学療法士の評価の腕の見せどころです。
よくある誤判定パターン
Thomasテストが当てにならない原因の多くは、代償を見逃していることです。
例えば、
- 骨盤が後傾して偽陰性になる
- 反対脚の抱え込み不足で骨盤が固定されていない
- 腰椎を過剰に反らして代償している
- 体幹が回旋している
こうした姿勢の崩れがあると、本来短縮していても「正常」に見えてしまいます。
逆に、緊張や恐怖心で力が入って「浮いて見える」だけのケースもあります。
Thomasテストは「角度を見るテスト」ではなく「動き方を見るテスト」と考える方が正確です。
代償動作から“どの筋が問題か”を読む
ここを読めるようになると、Thomasテストの価値は一気に上がります。
- 股関節外転 → 大腿筋膜張筋優位
- 膝伸展 → 大腿直筋短縮
- 腰椎伸展 → 体幹で代償
- 骨盤挙上 → ハムストリングス緊張
つまり、
「どの方向に逃げているか=どの筋が制限因子か」
という視点です。
これはまさに理学療法士の評価思考そのものです。
単純な陽性・陰性ではなく、運動戦略を読み取ることが大切です。
ストレッチ・介入へのつなげ方
評価したあとは介入です。
ただ伸ばすだけでは不十分なことが多くあります。
- 腸腰筋ストレッチ
- 骨盤後傾のコントロール練習
- 腹部・体幹安定化
- 歩行や立位動作での再学習
特に回復期の患者さんでは、「筋短縮+体幹不安定」の組み合わせが多く、ストレッチ単独では効果が続きません。
「柔軟性+使い方」の両方にアプローチして初めて機能改善につながります。
臨床での実体験
以前、慢性腰痛の患者さんでThomasテスト陽性の方がいました。
当初は「腸腰筋短縮だろう」と考え、ストレッチ中心の介入を行いましたが、大きな変化はありませんでした。
よく観察すると、
- 腰椎過前弯
- 骨盤前傾固定
- 体幹コントロール不良
が強く、股関節ではなく体幹の問題が大きいと気づきました。
体幹安定化と骨盤ポジションの再学習を中心にアプローチしたところ、腰痛と歩行が改善しました。
この経験から、
「Thomasテスト=腸腰筋の長さ」ではなく
「Thomasテスト=姿勢と運動制御の評価」
と考えるようになりました。
これがThomasテストの臨床解釈の本質だと思っています。
まとめ
Thomasテストは単なる筋短縮テストではありません。
- 筋の長さ
- 骨盤アライメント
- 代償動作
- 運動制御
これらを総合的に評価する重要な検査です。
浮いた・浮かないだけで判断せず、
「なぜこの動きになったのか?」
と一歩踏み込んで考えることが、理学療法士の評価力を高めます。
評価の精度が上がれば、治療の精度も上がります。
ぜひ明日からの臨床で、Thomasテストの見方を少し変えてみてください。

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