理学療法士が押さえておきたい車椅子選定の5つのポイント|座位評価から種類の違いまで解説

臨床スキル・実践知識

はじめに

「とりあえず標準型でいいかな…」と車椅子を選んでいませんか?
実は車椅子選定は、座位保持やADLの維持・向上に直結する大切な業務です。
座位評価から環境までをしっかり把握することで、利用者にとって“本当に合った車椅子”を提案できます。

今回は、理学療法士が現場で押さえておきたい選定のポイントを5つに絞って解説します。

車椅子選定が理学療法士にとって重要な理由

ADL・QOLに直結する選定の影響

車椅子は、単なる移動手段ではなく、姿勢を保持し、活動を可能にする「生活の土台」。
適切な選定ができなければ、褥瘡・側弯・活動制限などのリスクが高まります。

対象者の疾患・体幹機能による違い

脳卒中、脊髄損傷、整形疾患など、対象者によって必要なサポートは異なります。
特に体幹機能や上肢・下肢の可動域、筋力バランスは、評価のカギとなります。

車椅子選定で注意すべき5つのポイント

① 座位評価(骨盤・体幹のアライメント)

骨盤の傾き、左右差、体幹のねじれや側屈の有無を丁寧に評価。
傾いている場合は、クッションやサポートで調整が必要です。

② フットサポート・足底接地の確認

足がしっかり支持されているか? 足底が床やフットサポートに安定して接地できるか?
支持面が不安定だと、骨盤・体幹のバランスにも悪影響を及ぼします。

③ 背もたれ・クッションの選定

クッションの硬さや厚み、背もたれの高さ・角度も座位保持に大きく関与。
褥瘡予防や長時間の座位保持を考慮した選定が必要です。

④ 移乗のしやすさ(座面高・アームサポート)

移乗動作がしやすい高さ・アームサポートの形状かどうかもチェック。
特に立ち上がりやすさを左右する座面高は要注意です。

⑤ 屋内外での使用目的と環境(タイヤ・車輪)

段差が多い/屋外移動が多い場合は、大径タイヤやノンパンクタイヤが便利。
逆に施設内の狭い通路では、コンパクトな仕様が好まれます。

種類ごとの特徴と選定のヒント

自走式 vs 介助式 vs 多機能型

  • 自走式:上肢機能が保たれている方に。自立促進に有効。
  • 介助式:軽量で小回りがきく。上肢機能が不十分な方や屋内移動が中心の方に。
  • 多機能型:リクライニング・ティルト付きなど、座位保持や拘縮予防を重視したタイプ。

シーティングとの組み合わせ例

骨盤サポートクッションやサイドサポートなどの補助具と併用することで、より安定した座位保持が可能になります。

車椅子選定に役立つ評価ツールとチェックリスト

体幹・下肢・バランス評価の活用法

  • Functional Reach Test
  • 坐位バランステスト
  • Modified Ashworth Scale など

これらを組み合わせて、現実的な座位保持力を確認します。

実地でのトライアルの重要性

可能であれば、数種類の車椅子を実際に座って比較してもらうことで、利用者自身の主観的な快適さも確認できます。

まとめ|選定は“モノ”より“人”を見ることが大切

車椅子選定は、「どの製品を使うか」ではなく、「その人に何が合うか」を丁寧に探るプロセスです。
理学療法士として、評価と観察を丁寧に積み重ね、一人ひとりに合った選定を行っていきましょう。

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